理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

日本では盛り上がらない「ネットワーク中立性」を学生が考えてみた

はじめに

 「ネットワーク中立性」という概念があります。英語では「Net Neutrality」。日本ではあまり聞かない言葉ですよね。アメリカで最近物議を醸しました。

jp.techcrunch.com

 

 通信ネットワークを専攻している学生の僕ですが、恥ずかしながら最近この議論を知りました。みなさんは知っていたでしょうか。

 調べてもらえば専門的な記事に当たると思いますので、ここでは僕の個人的な感想を中心に書いていこうと思います。一人の人間としての意見です。いろいろと間違っている点もあるかもしれませんが、大目に見てください。

僕が簡単に説明してみるとするならば

 インターネット上にあるデータには、誰もが自由にアクセスできます。AさんはYouTubeを見れるけど、Bさんは見れないなんてことはありません。しかし、Aさんはブロードバンドの業者に高いお金を払っているのでいつでも好きな時にYouTubeを見れますが、Bさんは普通の料金プランなので混雑する時間帯はまったくYouTubeが見れないとしたらどうでしょうか。大したことないと思うでしょうか。

 もう一つ例を挙げます。C社はブロードバンド業者に高いお金を払っているおかげで自社のサービスをサクサクと動かすことができますが、D社は創業間もなく資金が充実していないため、普通の料金プランしか払えません。優れたサービスを提供していたのにも関わらず、ユーザに使ってもらえなかったせいでD社は潰れてしまいました。こんなことが実際にあったとしたら、大したことないと思うでしょうか。

 様々な利権が絡む複雑な問題のようですが、だいたいはこのようなところにネットワーク中立性の議論の胆があるのではないなかと僕は考えています。

賛成?反対?

 僕自身は、ネットワーク中立性のアイディアに賛成です。インターネットはすべての人に開かれたオープンなプラットフォームであるべきだと思います。特に、上で挙げたC社とD社の例のような問題が実際に起こったら、イノベーションが止まってしまいますよね。今後もどんな革新的なサービスが僕らをわくわくさせてくれるだろうかと期待しているわけですから、それを妨げるようなことはやめてほしいです。

 ただ、通信業者の気持ちもわからないでもないんですよね。高速なインターネットを使いたいならお金を払ってくれれば対応するよ、というのはビジネスとして捉えれば当たり前のアイデアです。ただ、これをアメリカ政府が法律を作ってまで禁止しようとしているのは、やはりインターネットというのが社会に欠かせないインフラになっていることの表れなのでしょうね。

日本でネットワーク中立性が議論されないのはなぜ

 ニュースでネットワーク中立性が取り上げられているのを見たことはありません。

credo.asia

 

その理由について上記の記事では

「ネットワーク中立性」が日本では聞き慣れない言葉なのは、日本の音楽、動画、電子書籍などを含めたブロードバンドコンテンツがアメリカに比べてまだまだ充実していないからだと考えられます。

と書いています。アメリカに住んだことはないのでよくわからないのですが、ブロードバンドコンテンツに関しては日本よりも進んでいるそうです。

 しかし僕が学会で聞いた話によると、日本でこの議論が盛り上がらないのは、日本の通信環境が素晴らしく良いのが原因なんだとか。通信インフラがまだまだ充実していないアメリカでは誰かが通信帯域を占有してしまうとすぐに通信遅延が出るのに対して、日本ではめったにそういった遅延が起こらないそうです(遅延が起きたとしても十分に早い)。日本の通信が世界トップクラスの水準だという話はいろいろなところで聞くので、こっちのほうが信憑性が高いのかなと思っています。実際はどちらも真なのかもしれません。

 日本ではそもそも問題にならないのだとしたら、別に気にしなくていいのではないか。確かに現状はあまり気に掛ける必要はないのでしょう。ただ、超大容量の通信を必要とするサービスが突如爆発的に普及する可能性がないとは言い切れません。そうなったときに初めてこのネットワーク中立性の議論が日本でも本格化するのでしょうかね。

 

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