webは「無断リンク禁止」の時代に戻らねばならないのか?
インターネットの本質について考えたことを書こうと思います。
リンクで広がる波紋
今回は以下の連続ツイートに触発されて書いています。ジャーナリストの佐々木俊尚さんのツイートです。
(1)批判が批判を呼ぶ。インターネットの難しいのは、何かを批判する発言が、同時にその批判対象を拡散する行為になってしまうこと。特にリンクを貼るという行為にそれが顕著にあらわれる。
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) November 7, 2015
(2)
AさんがBさんの記事を消費し、リンクとともに批判的に紹介すると「AがBを批判した」という二次コンテンツが生まれ、これがまた別の第三者によって消費される。こういう不断のないコンテンツの増幅と二次、三次、四次と続く多重円になっていくのがネットの特徴で、私たちは逃れられない。
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) November 7, 2015
(3)この効果を逆に使い、Bさん記事をAさんが激しく批判して「AがBを激しく批判した」と二次コンテンツ化すると、もとのBさん記事のパワーが二倍にも三倍にも増幅しやすくなり、相乗効果でAさんコンテンツは拡散しやすくなる。そうやって自分の名前を売る人っているでしょ?
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) November 7, 2015
(4)この増幅効果をどう押さえ、小石を投げた池の波紋のように外側に向かって広がっていくだけでなく、増幅しないで集約できるしくみをどう作るのかということがネットの課題でしょう。わたしは今のところ、限定された空間におけるゆるい文化圏の構築しかないと思っているのですが。(おわり)
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) November 7, 2015
この連続ツイートで説明されている事象は、最近よく目にする光景なので改めて書くことはやめます。事例として炎上しているブログへのリンクを張ったらそれこそ僕も増幅効果の一端を担ってしまうので、それもやめます。
webをwebたらしめているものは、つながりだと僕は理解しています。別の文書への参照を埋め込むことができる文書(ハイパーテキスト)のクモの巣状のつながりが「World Wide Web」ですよね。web上にあるページはどこかのページに繋がることが必然であり、繋がっていないページに価値はありません。webに一元的な管理者はいないので、どこのページとどこのページが繋がっていようが繋がっていなかろうが全体の運用にはまったく影響がありません。
どこかの誰かが作ったwebページのリンクを張った別のページを作成するということは、極めて当たり前な活動です。しかし佐々木さんの指摘するように、それが時として問題を引き起こしています。
無断リンク禁止だったあのころ
引用したツイートで問題視されている「リンクによる延焼」を阻止するためには、リンク機能を制限すればいいわけですよね。最近はめっきり見かけなくなった「無断リンク禁止」という言葉が思い出されます。
2003年前後に、無断リンクを控えるべきだという無断リンク否定派の立場と、そのような主張は無効であるという無断リンク許容派の立場がブログなどを舞台として論争を巻き起こした。否定派はインターネット上での儀礼的無関心の一環として無断でリンクをはられることを拒んでいるならそっとしておくべきだと主張し、肯定派はそもそもインターネットの設計思想からしてリンクするにも許可を要するのはナンセンスであると主張した
今から12年前に一番ピークだったらしいこの議論がどういう決着を見たのかは知りません。もし決定的な結論が出ていないのなら、歴史は繰り返すと言いますし、もう一度この議論が巻き起こる可能性ってゼロではないと思いませんか? もし仮に、アクセスのためなら嘘も誇張表現も載せまくるアフィリエイトサイトが増えたり、書き手の人格を攻撃するような言葉の応酬が続いたとしましょう。そしたら、「アクセス稼ぎのためだけにリンクを張って騒ぎを大きくするな」とか「そんなに罵詈雑言を投げかけるならもうオレのサイトにはリンクするな」なんていう発言をする人が現れるかもしれません。
そのうち、ブログサービス会社に直訴する人が現れて、「当ブログサービスでは無断リンク禁止です」なる規約ができて、リンク申請ボタンが各ブログに配置されることになるんです。リンクを張りたかったらそのブログの書き手に承認をしてもらわなければならなくなります。そうなると「この人だったらリンクを張られてもいい」とか「この人はダメ」っていう基準で判定がなされがちになるものだから、「なんであいつのリンクは許可されているのにオレのリンクはダメなんだ」っていうクレームを吐く人が出てきて、今よりももっと殺伐としたブログが増えるんです。最高ですね。
居心地のよい新しい空間を目指して
現実的にサービス側が実装するとしたらリンクを切れる機能なんでしょうかね。魚拓を取ればあんまり変わらない気がしますし、言及している時点でもう火種には油が注がれているわけですから、防ぐ手立てなどないのかもしれません。
土台から変えてしまうという手段は考えられます。根本原因が「誰もがオープンアクセスで繋がれる」ことにあるのだとしたら、佐々木さんの言う「限定された空間におけるゆるい文化圏の構築」はひとつの解になり得るでしょう。オープンがダメならクローズドにして、限られた人しか見ることのできない空間でキャッキャウフフするんです。上手くやれれば非常に居心地のよい新しい空間が誕生すると思います。
でも、それはもうwebの本質とはかけ離れているわけです。クリック一つで世界中の人々と繋がれるインターネットに無限の可能性を見ていた僕らが、果たしてクローズドなコミュニティを楽しめるでしょうか。あえて肯定的な見方をするならば、「webから一歩先に進んだ未来の何か」のしっぽが見えているのかもしれないと考えられはしないでしょうか? 未来の仮想空間コミュニケーションは、限られたメンバーとクローズドな世界で楽しむものになっている。うーん、全然想像がつかないですね。
おまけ:リンクを禁止できるか
技術的にリンクを禁止できるのかっていうのも気になったので調べてみました。マナーやルールを欠いた発言をしているページからのリンク機能を停止するということです。
外部サイトからのリンクを禁止するには、「.htaccess」という特殊なファイルを使って、 Referer(リファラ)という情報を調べてアクセス制限を施します。
ふむふむ。簡単にできるようですが、ファイルサーバーに「.htaccess」というファイルをアップロードしなければいけないらしくて、僕らのように無料のサービスに乗っかって文章を書いている人にとっては無理なようです。自前のサーバーでやっている人は簡単にできると思います。フィルタを自分で作成できるらしいので、アクセスを許可するリンクと禁止するリンクを思い通りに設定できるみたいです。
そのほか、勉強っぽいこと。
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