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理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

タイムリープ焼き肉とシャチョサン

雑記

 先日、研究室の先生に本当においしい焼き肉屋さんに連れて行ってもらいました。食べログで値段の制約を取っ払って上位に来るような、一人前のお値段が樋口一葉さん一人で賄いきれないようなお肉が置いてあるようなお店です。もっと高級なお店はいくらでもあるのでしょうが、僕みたいな庶民にとっては非常に敷居が高いお店だったのです。こんなお店で焼き肉を食べたのは初めてでした。

シャチョサン、シャチョサン

 せっかくだからと最上級のお肉を食べさせてもらいました。そのお味は、控えめに言って衝撃的でした。大げさに言うと人生が変わるぐらい。このときの感動を忘れたくないので、こうやってキーボードを叩いています。

 お店は完全個室でしたが、隣の個室の声が漏れ聞こえてくる程度には狭かったです。よく耳を澄ますと「シャチョサン、シャチョサン」と片言の女が言ってました。普段相まみえることのない人種と同じお店にいるのだと、その声は伝えていました。座席はトランポリンみたいにフカフカで、おしりが柔らかく包み込まれます。肉を焼くための七輪は後から運ばれてきました。机に備え付けられていないというだけで僕は高級感を感じました。

 注文したお肉は見た目からして普段食べている肉とは違いました。霜降り肉には本当に霜が降りていました。どのお皿にどのお肉が盛りつけられているのかわかるように札が立っていました。普段行く焼き肉屋さんでは、「カルビ」と「ちょっと良いカルビ」を頼んで違いが分からなくなるところまでがテンプレなのですが、このお店ではそれが許されませんでした。お肉はみんな背筋を伸ばして、名札を胸につけて、お皿の上に鎮座していました。

 素晴らしい火加減を保ち続ける七輪を囲み、研究室の同期とお肉を焼きました。普段はお肉の取り合いになるのですが、この日食べたお肉の存在感は神々しく、醜く争う気持を沈めました。端数はジャンケンで決めたんですが、それぐらいは神様も見過ごしてくれるはず。

 グルメ番組で「肉汁がうんぬん…」と言っている芸能人の食レポには共感できない人生を歩んできたのですが、この歳になってようやく分かる日がきました。神々しい輝きを放つお肉からは、噛む度に脂が溢れ、流れ出した脂は幸福感となって僕のお腹を満たしました。タレと肉の味と脂が口の中で絶妙に混じり合い、何段にも変化しながら溶けていきました。本当においしいと思うものを食べると、心の底から幸せだと感じます。490円のハンバーガーや780円の台湾まぜそばなど、今までたくさんおいしいものを食べてきました。しかしこの日お肉を食べたとき、まるで初めて好きな人と手を繋いだときのように、新鮮な驚きを伴って幸せが舞い降りてきました。

 料理漫画の登場人物たちは、おいしいものを食べるとものすごいリアクションを取ります。焼きたてジャパンでも、トリコでも、食戟のソーマでも。たかが食べ物だろうとバカにしていたのですが、本当においしいものを食べて全身が味覚に支配されるかのような感覚を味わいました。顔が緩み変な声が漏れます。お肉を噛んでいるときは余計なことに頭を使いたくなくなって、目を開くことすら億劫になります。ただただお肉を味わうことに全神経を向けていました。

タイムリープ

 何がすごいかと言うと、「がんばろう」と思えてくるのです。「何をか」と問われると答えるのが難しいのですが、あえて言うなら「人生を」です。こんなに美味しいものがこの世にはある。きっとこれ以上に美味しいものもたくさんある。それを知ってしまった今、「もっと食べたい」という欲求を押さえつけるのは非常に困難になってしまいました。お金が必要になるでしょう。来年から社会人になるのでがんばって働きます。働いてもいないのに勤労意欲が湧いてきました。

 あの感動をもう一度得られるなら、多少のことは犠牲にできます。1年に1回程度で構わないです。口の中で刹那に消えゆく花火のような幸せだとしても、もう一度出会いたい。感動は心に響き続けます。満たされて、溢れて、安らかなる気分になります。

 年に1回の贅沢を励みにしてこれから何十年もの間頑張り続けたら、どこまでいけるでしょうか。社長になれたら最高だと思います。もしも社長になれたら、若くてかわいい女の子をはべらしてあのお店に戻ってこようと思います。控えめに言って人生を変えてくれた、人生の分岐点たるあの焼肉屋さんに。そこで僕はきっと連れてきた女の子にこう言わせるのです。「シャチョサン、シャチョサン」。

 

 

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