もうすぐ研究室の学部4年生の卒研発表会があります。先日、発表内容の先生チェックの場に先輩として僕も立ち会っていました。2年前の僕と同様、研究室に入りたての4年生の発表は拙く、先生から大量のダメ出しをもらっていました。
けっこう辛いんですよね、ダメ出しを受けるというのは。先生チェックの場でのダメ出しとの付き合い方を間違えると、研究室生活が辛いものになってしまうだろうなと思います。もちろん、先生方は僕らの発表がより良いものになるようにチェックをしてくださっているのは重々承知ですが、学生側も上手く付き合っていくように心掛けないと下らないことでストレスを貯めてしまうことになります。
2つ書きたいことが見つかったので、前編後編として分けることにしました。前編はこちらです。よかったら目を通してみてください。
研究発表への添削・アドバイスは聞き比べると良い - 大学院生のネットワークなブログ
「流れを変えよう」という破壊の呪文
先生から添削を受けるときに、「流れを大きく変えよう」という提案を受けることがあります。この指摘を受けると今でも僕は凹みます。端的に言ってしまうと「全然ダメだね」ということだからです。これは学会や論文誌の原稿にも言えることです。
スライドも原稿も、相手にストーリーを伝えることが大事です。「○○という背景があって、その中で××という課題に取り組み、△△という結果を得られた」のような感じです。これが相手に伝わらないと自分の研究が全く理解してもらえません。
そのストーリー展開を先生に直されるということは、そのスライド・原稿が根本から良くないということです。このままでは全然ダメだよという指摘だと僕は捉えています。この指摘を受けたら素直に受け止める必要がありますし、まだまだだなと大いに反省する必要があるのです。
流れが大きく変わってしまうと修正するのが非常に大変です。「パート3を全部削って、パート4に○○に関する記述を加えよう」というアドバイスを頂いたとしても、たぶんパート1もパート2もパート5も直さなければならないことが多いです。だから、作業が大変だということも加わって、流れに関する指摘を受けると二重に凹みます。
研究にも改革が必要なときがある
しかし凹んでばかりいてもしょうがないことです。なんとかポジティブに捉える必要があります。僕は流れを大きく変更するように言われたら、改革なのだと割り切ることにしています。改革を行うには痛みを伴いますから、自分で自分を改革するというのはなかなか難しいことです。他人に任せるというのは合理的な方法でしょう。
せっかく作ったものがぶち壊されてしまうとショックです。しかしそういうときは、「スライドや原稿の根本、つまり研究内容自体を見直すチャンスだと考えてもよいのではないか」というのが僕の今回の提案です。
普段研究をしているときは実験やシミュレーションプログラム作成にばかり目がいってしまって、研究全体を俯瞰する意識が消えてしまうことがあります。全体像をしっかり練り込んで置かないと、アウトプットする段階でストーリーがイマイチになってしまいます。だから、先生から「流れを変えよう」と言われたら、研究の動機にまで立ち返ってみることにしています。
だからといって研究をもう一度ゼロからやり直す必要はなくて、データの見せ方を変えるだけで大丈夫な場合が多いです。「○○のために××を示した」と書いていたところを「△△のために■■を示した」と言い換えるだけで全体の流れは変わります。自分の検討のフォーカスポイントを変えるということです。
もしくはデータを少し追加することが必要になるかもしれません。今まで扱ってこなかった評価軸を取り入れて、流れを修正することもあります。さらにそこから次の研究テーマが見えるかもしれません。発表を練り込むことで、研究が進展していくこともあり得るわけです。
黒船がやってきて国中を滅茶苦茶にしてくれたのがきっかけとなり、改革が実行されるようなものだと僕は捉えています。先生が添削によってもたらしたカオスから、新しい秩序が生まれてくる。そう考えると、添削で流れがぶち壊されてもポジティブに捉えられるのではないでしょうか。
めんどくさいおじいちゃんの話
この話は下の記事に少しインスパイアを受けています。ふわっとした概念の話が多いのですが、僕が体験したことと結びついているので大いに腑に落ちました。
第2回 めんどくさがられるような人になりたい。 - 宮本 茂 × 糸井重里 ひとりではつくれないもの。 - ほぼ日刊イトイ新聞
第3回 ひとりではつくれないものをつくってる。 - 宮本 茂 × 糸井重里 ひとりではつくれないもの。 - ほぼ日刊イトイ新聞
コピーライター糸井重里さんと任天堂の宮本茂さんの対談です。この中で糸井さんが、「めんどくさいおじいちゃん」になりたいと言います。
たまにやって来て、会議とかに顔出して、
あれこれ言って、若い人たちから
めんどくさがられるような人になりたい。
言われた方からすれば面倒くさい示唆を投げかける。それが回り回って、企画をよりよい方向に進める原動力になればいいと仰っています。しかしその問いかけは一歩間違えてしまうと製品をダメにする可能性があるので難しく、先の先を読まなければなりません。でも、あっと驚くような素晴らしい企画を作り出すためには、こういうプロセスが必要なのだと思います。
研究原稿や発表スライドの添削も同じです。先生は、コアな部分を外すような指摘は絶対にしてきません。僕からしたらスライドが滅茶苦茶になってしまうと感じられるような煩わしいアドバイスを頂いたとしても、コアを外した指摘ではないので、僕が頑張ることによってよりよいものに導かれていきます。
先生からとんでもない指摘がきたとしても、こんな風に考えてみてはいかがでしょうか。
研究スライドを作るときは研究室に置いてあったこの本を参考にしました。かなり具体的なことが書いてあるのでおすすめです。
学生・研究者のための 使える!PowerPointスライドデザイン 伝わるプレゼン1つの原理と3つの技術
- 作者: 宮野公樹
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2009/04/10
- メディア: 単行本
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その他、研究室について書いたことを紹介します。
修士論文発表会について。
色んな研究室があるよ、って話。
理系大学院生の休日について。
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