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意外なところに「つながり」ってありますよね

【映画評】スターウォーズ 最後のジェダイ/3部作の2作目の難しさを感じさせない傑作

最初だけネタバレなしです。

 

 

 

 やっぱりスターウォーズはすごいなと思いました。3部作の2作目。ストーリー展開の面で難しい立ち位置だと思います。しかし見事に組み上げられた「面白い映画」を楽しませてもらいました。

 スターウォーズシリーズの本編を名乗るからには、様々な角度から高水準なものが求められているでしょう。1本の映画作品として面白いものになっているか、3部作の2作目として1作目と3作目をきちんと橋渡しできるか、そしてスターウォーズシリーズのエピソード8として今まで集めてきたファンたちを喜ばせることができるか。僕はすべてをクリアしていった傑作だと思いました。1個ずつ書いていきます。

 

 

 

以降はネタバレを含みます。

 

 

 

1本の映画として

 2時間半の上映時間はあっという間に過ぎ去っていきました。純粋に1本の映画として、この作品はとっても面白い作品であると僕は思いました。もし仮にエピソード7を見ずにこの作品を見たとしてもけっこう楽しめるのではないでしょうか。

 戦闘機のドッグファイトやアクションシーンなどハラハラドキドキするシーンが多めでした。どのシーンも見応え十分。そしてその合間に静かなシーンが入ってくるので、上手く緩急が付いています。途中で集中力が切れませんでした。

 映像の1コマ1コマが1つの絵として芸術的に仕上がっていました。人物と背景のバランスやカメラワークが素晴らしいことに加えて、今作は色の対比も鮮やかでした。宇宙の漆黒の黒、スノークの部屋の赤、鉱物の星を覆う白が特に心に残っています。レイとカイロ・レンが背中を預け合ったあのシーンは、ストーリーの展開的にも鳥肌ものでしたが、背景の赤とレイの白とカイロ・レンの黒の見事なバランスで網膜に焼き付いてしまっています。

 また、宇宙船の中の殺風景で実用的な空間と、ルークの住む惑星オク=トーの孤島の大自然、カジノの惑星カント・バイトのきらびやかさの対比も印象的で、場面が切り替わるごとに見た目が大きく変わり、見ていて全く飽きません。現代の映画の撮影技術の粋を集めて撮られた映画なのだなと思います。

 人物の描き方も素晴らしかったです。この1本の映画の中で、それぞれの人物像をきちんと描き出し、心境の変化や成長を丁寧に映し出していました。エピソード7ではフィンの成長が記憶に残っていますが、今作ではポーとホルドの対立がとても印象的でした。彼らが登場している時間は長くないのですが、両者の人柄がしっかりと伝わってきて思わず感情移入してしまいます。彼らのような勇敢な人たちが他にもたくさんいて、反乱軍は戦い続けているのでしょうね。

3部作の2作目として

 難しいポジションだと思います。1作目で広げた風呂敷を、さらに広げる部分もあれば、畳み始めないと3作目で説明しきれなくなる部分もあります。しかし全部畳んでしまうと、「次回作を早くみたい!」と思わせることができなくなってしまう。繊細なバランス感覚が求められる綱渡りを見事やってのけたと僕は思いました。

 昔を振り返っても2作目は共和国側がピンチに陥るというのがお決まりの展開です。今回に至っては、反乱軍は逃げるだけ。大筋を見ると非常に単調なのに、前述したように1本の映画として非常に面白いものに仕上がっているので、見ていて飽きません。

 それに加えて、この3部作の中心テーマであるレイとカイロ・レンの物語が急加速していきます。このシリーズではカイロ・レンが絶対的な悪役という存在ではないため、レイvsカイロ・レンがどのような決着を見るのか全く想像がつきません。そこが非常に面白いところ。

 反乱軍vsファーストオーダーの戦いについては、反乱軍が逆転勝利するというお約束が破られることは絶対にないでしょう。ハッピーエンドになることは保証されているので、安心してレイとカイロ・レンに集中することができる。彼らはストーリーの中心でありながら、どちらも謎多き人物。そもそも彼らは何者なのかという根本的なところが大きな謎となってエピソード7,8,9をドライブしていきます。

 今作で、なぜベン・ソロがカイロ・レンになってしまったのかという謎に対する答えの一端が示されました。一方でレイが何者なのかという謎はひっぱられ続けることになります。このさじ加減が見事なんですよね。片方がわかったのにもう片方がわからない。気になって仕方がない。なんとしてでも3作目を見に行くしかなくなってしまうわけです。

 謎自体がシンプルで、誰にでもわかりやすいのも上手く考えられているなと思いました。複雑さはありません。レイの両親は誰なのか、その1点にフォーカスされているので、議論の的にしやすいわけです。レイの両親を隠し続ける選択をしたことで、この作品は次回作への見事な橋渡しになっていると思いました。

 レイとカイロ・レンの奇妙で密接な繋がりを何度も見せられた僕らは、血のつながりがあるのかと考えてしまいます。レイがルークの子供なら、カイロ・レンとの関係は従妹にあたるので妥当なライン。しかしそれにしてはレイに対するルークの態度は冷たすぎるのではないか?でももう一度見に行けばヒントが隠れているのかも?そうやってこの作品は熱心なファンを何度も劇場へ呼び込むことになるはずです。

 それにしてもレイという人は強すぎやしませんかね。この作品ではカイロ・レンの弱さ、ルークの弱さ、レイアの弱さが浮き彫りになる。ですがレイは弱いところをほとんど見せません。フォースに対する恐れを見せる場面こそありますが、自分はそれをコントロールできると信じてルークに指導を乞う。常にまっすぐ自分の勝利を信じ、反乱軍を信頼し、カイロ・レンも取り戻せると信じている。心が強い。そして戦っても強い。老いたとはいえあのルークを打ち倒し、カイロ・レンとのフォース勝負にも勝ってしまう。カイロ・レンは怖くて仕方がないでしょうね。

 こんなにもレイは強い。そして今作でしきりに言及されたのはバランスという概念でした。光のあるところに闇がある。カイロ・レンは、血筋だけを見れば光の戦士です。ということは、レイの両親はシス側の人物なのかなというのが僕の予想です。だから両親が弱点になるとカイロ・レンは考えている。でもじゃあ一体誰なのかというと全然わかりませんが。

 あとは恋の行方も気になりました。エピソード7だけを見ればレイとフィンが最終的に結ばれるのかな、なんて単純に考えてしまうのに、今作ではローズという思わぬ伏兵が登場。フィンは優柔不断そうな男なので、取り合いになったら面白そうです。限られた尺の中で、こんなにも多様な要素を破たんなく組み込んでいてすごいなと思うばかりです。

スターウォーズエピソード8として

 スターウォーズシリーズファンに対するサービス精神が忘れずに盛り込まれていたのも素晴らしかったです。R2-D2がルークを説得しにかかる場面。あの発想はすごかったですね。あのホログラムがすべての始まりだったわけです。そして若いころのレイア姫を登場させることによって、彼女が歩んできた戦いの道のりの険しさを思い出すことになります。彼女はおばあちゃんになった今でもずっと戦っている。数多くの仲間が命を落としました。無謀な突撃作戦を強行したポーを激しく叱責する場面は、今までの経験が呼び起こした彼女らしい行動だなと思いました。

 細かいところにもサービスを詰め込んでくれているのがニクイ。レイがミレニアムファルコンのキャノンの操縦席に座って「私これ好きかも!」って叫んだ場面。ルークも同じ場所で同じようなこと言っていたような。そういうちょっとした心遣いが素敵でした。

 長くシリーズを続けているとベテランファンとの付き合い方が難しくなってくると思います。長年愛してくれている彼らが喜んでくれるもの提供したい、でも彼等に媚び過ぎてもダメで、新規のファンも獲りに行かなくてはいけない。その辺のバランスも決して見失っていないんですよね。

 ただ、フォースってこんなにすごいことができたっけ?というのはちょっと気になりました。今までの設定をなんとしてでも守れ!なんて言うつもりはなくて、新しいものを見せてくれるのは大歓迎なのですが、レイアの宇宙遊泳はちょっと消化不良かなと。レイアのフォースってそこまで強くなかったですよね。あれはレイアの力のように表現されていましたがカイロ・レンが手助けしていた説もあります?もしくはストーリーの都合上レイアがフォースの持ち主だということを強調する必要があったとか。

 レイとカイロ・レンの遠隔交信やルークの分身の術は似たようなことが以前にも起きていたので違和感はなかったですが、あの場面だけはちょっとひっかかりました。必要だったのかな、なんて。

終わりに

 気が早いですがもうエピソード9が楽しみで仕方がありません。いったいどんな結末を僕らのために用意してくれたでしょうか。こんなに面白いエンタテイメントを、たった1800円で楽しめるこの時代に本当に感謝です。

 

 

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