理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

すべての引っ込み思案に「内向型人間」という考え方があることを知ってほしい

 最近読んで救われた気分になった本があります。僕と同じ属性の人たち、すなわち理系人間、ゲーム好き、オタク気質の方には響く人がきっと多いと思って紹介します。

内向型を強みにする

内向型を強みにする

 

 研究よりも仕事で異常に疲弊してしまう自分

 本のタイトルを見ればあるどのような本なのか程度察しがつくと思います。控えめで引っ込み思案な自分があまり好きになれない人、自ら前に出て行って自分の主張を展開することや、大勢の輪の中の中心人物になるのが苦手な人に読んでほしいです。僕もそういう人間の1人ですが読んでよかったなと思いました。

 また、他人と一緒にいるのは嫌いではないけど、仲の良い友人でさえ長時間一緒にいると疲れてしまう。1人の時間が好きで、1人の時間がないと生きていけない。僕は自分のそういうところを、人間として何らかの欠落なのではないかとさえ思ったことありました。でも、そうではないのかもしれないと思えるようになりました。

 冒頭で「救われた気分になった」と大げさなことを書いたのは理由があります。社会人になって丸二年が経過しようとしていますが、自分は仕事をすると疲れ果ててしまうことを少し不思議に思っていました。大学院生のときに朝から晩まで研究をしているときとは疲れの度合いが全然違うのです。実働時間をみたら研究の方が断然長かったのにもかかわらずです。

 社会人1年目のときはただ単に慣れていないだけなのだと思っていましたが、2年目になっても特に大きな変化はありませんでした。大好きなゲームに仕事として関われるようになったのに、自分はこの仕事に向いていないのではないかとさえ思うようになりました。そんなときにこの本を読んで、仕事で疲弊してしまうのは自分のひとつの特徴であって、人間として劣っているわけではないし、転職したところでどうにかなるものではないな、と思うようになりました。

 この世の中には内向型の人間と外向型の人間がいるというのが本書の主張です。人間の心理に関することなので1から100まですべてが正しいとは思いませんし、すべてを妄信しようとは思わないのですが、この考え方を知れてだいぶ心が軽くなりました。序盤だけでも読んでみてください。僕と同じように救われる方がきっといると思います。

内向型人間と外向型人間

 すべての人間は内向型と外向型に分類することができ、それは0か1の離散的な分類ではなく、連続体上のどこかにプロットされていて、どちらに寄っているかの程度の差であると本書は主張します。僕なりに解釈して作った図ですがおそらく下図のようなことを言いたいのだと理解しています。Aさんはちょっとだけ内向型で、Bさんはかなり外向型だといった具合です。

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 内向型/外向型の一番大きな違いは、エネルギーの蓄え方/消費の仕方にあると書かれています。内向型であればあるほど、自分の内側にエネルギーを求める傾向にあり、外の刺激に接するとエネルギーを消費してしまう。逆に外向型の人は自分の外側にエネルギーを求め、自分の内側の世界にいるとエネルギーを消費してしまう。

 以下は本書における内向型の人のエネルギーの傾向を説明した一文。

内向型の人のもっとも顕著な特徴は、そのエネルギー源である。内向型の人は、アイディア、感情、印象といった自身のなかの世界からエネルギーを得ている。彼らはエネルギーの保有者だ。外の世界からの刺激に弱く、すぐに「もう手一杯」という気持ちになる。これはイライラ、あるいは、麻痺に似た感覚なのかもしれない。

 逆に外向型の人を説明した一文。

では、外向型の人のもっとも目立った特徴はなんだろう?それは、外の世界、つまり、さまざまな活動や人や場所や物からエネルギーを得ている点だ。彼らはエネルギーの消費者なのである。長時間、のらくらしたり、自己反省したり、ひとりで、もしくは、ひとりの人を相手に過ごしたりすると、彼らは刺激不足におちいる。

 エネルギーの「保有者」「消費者」と書きわけると内向型の方がすごい人間に見えるのですが、おそらく日本語のニュアンスの問題です。内向型/外向型のどちらが優れているというわけではないと書かれています。ただ単に違うだけなのだと。このエネルギーの理論がすごく腹に落ちるので好きになりました。

なぜ自分は仕事で疲弊してしまっているのか

 本書の分類によれば、私は典型的な内向型の人間です。15問ほどのチェックリストが掲載されています。(今までの人生から、チェックするまでもなく自分のタイプを知っている人が多いのではないかと思いましたが)

 大学院生として研究をしているときと、ゲーム会社に就職して仕事をしているときと、明らかに疲れの度合いが違っているのはなぜかという問題に立ち返ってみます。内向型/外向型の理論に照らしてみると注目すべきポイントは明白です。研究はひとりで行い、自分の頭の中で理論をこねくり回していた(=自分の内側の世界で活動していた)のに対して、仕事はたくさんの人とコミュニケーションを取り合いながら進めていく(=外側の世界から刺激を受けながら活動する)ものということです。頭を使うという点ではどちらも同じなのですが、僕の気質からいってエネルギーの消費の度合いが段違いであると考えることができます。

 「この仕事に向いていないのではないか」という問いに対する答えとしては、サラリーマンとして働く以上、どんな会社に転職しようとエネルギーを消費して疲れてしまうことには変わりがないだろうと予測をつけることができます。大学教授でさえ、様々な人とコミュニケーションを取りながら仕事をしているのを研究室で見てきましたから、たとえ大学に残って研究の道を志していたとしてもこの問題にはぶち当たっていたことでしょう。

 エネルギーの充電方法に目を向けたときもこのエネルギーの理論は僕に当てはまっているなと感じています。まさにいまこのようにブログを書いているという行為は、自分の内側に目を向け、自分の精神世界を掘り進んでいることですから、僕にとってはエネルギーが充電されることになります。最近は銭湯に行ってサウナでぼーっとするのも好きですが、それも同じ。逆に人が大勢集まるイベントに行くと、せっかくの休日なのにかなり疲れた気分になっていたのは、外からの刺激を受け取ってエネルギーが消費されてしまっていたからなのでしょう。

違いが生まれる理由

 本書では内向型/外向型の違いを脳科学から説明しようと紙面が割かれています。ここでは内向型/外向型という考え方があることを知ってほしいと思って文章を書いているので、あまり深く立ち入ることはしません。

 着目しているポイントは主に3つ。

・内向型の人は外向型の人よりも脳を流れる血流が多い

・支配的な神経伝達物質に違いがあり、それが流れる経路の長さに差がある。内向型の人の方が経路が長く、ゆっくりとした反応をしがちである。

神経伝達物質の差により、内向型の人は副交感神経優位であり、外向型の人は交感神経優位である

 この3点の違いによって、様々な気質の差が生まれているとのこと。脳科学には明るくないので特にコメントをつけようとは思いませんが、理論と実験結果に基づいているということはわかりました。

内向型の人間としてこれから意識してみようと思ったこと

1人の時間を意識的に確保すること

 昔からなんとなく1人の時間が好きだなと思っていました。本書の理論によれば、僕は1人の時間にエネルギーを蓄えていたことになります。好きとか嫌いとかの次元ではなく、自分は1人の時間を確保しないとエネルギーが切れてしまう気質なのだと考えてみることにしました。

 大勢の人とコミュニケーションをとりながら朝から晩まで過ごすと、終盤にぷっつりと糸が切れたように何も考えられなくなる経験を昔から何度か経験しました。仕事で初対面の人との打ち合わせが続いた日もそうです。本書の理論で言えば、エネルギーが切れてしまった状態と言えるのでしょう。そういうことが起きる気質なのだと意識していきたいなと思います。

今の社会は外向型の人が有利になるようにできているということ

 この本では、全人類の75%は外向型だと書かれています。内向型の人間は4人に1人しかいないマイノリティ。社会はマジョリティが有利になるような仕組みを持ちますから、自分は少し不利な立場にあることを自覚する必要がありそうです。

 何かにつけてコミュニケーション能力やリーダーシップが重要視される世の中です。研究者やエンジニアでさえ、コミュニケーション能力を問われます。組織で働くのならチームの一員として結果を出す必要があります。1人で黙々と作業することしかできない人間は、AIにとって代わられるかもしれません。そういう時代であることをきちんと認識していきたいと思います。

 また、外向型の人は内向型の人の行動や考え方を理解できないかもしれません。両者は正反対の気質を持っています。周囲の人間に変なヤツだと思われないためにも、自分の気質を理解して、いざというときに説明できるようにしておくことも大事なのかなと思っています。

自分を理解し、肯定すること

 自分の引っ込み思案なところや、人と関わり続けると疲れてしまうところは、人間的に劣っている面だと思っていました。しかしそういう気質なのだと捉えると諦めがつきます。努力をすれば解決できるものではない、と。だから無理に自分の嫌なことをする必要もないのだと考えることにしました。自分と仲良く付き合っていくためにも、これからも自分自身のことを観察して、自分がどういう特性を持っているのか理解に励みたいと思いました。

 逆に自分が好きなことや得意なことを、自信を持って好きだと言えるようにしたいなとも思いました。自分の内面を探りながらこうやって文章をひねり出す作業は、実は外向型の人にとってはあまり好きになれない行為なのかもしれません。でも僕は好きです。だから続けていきたいなと改めて思いました。

 ただ、「自分は内向型だから・・・」と変に言い訳の材料にしたくないとも思っています。人とコミュニケーションをとることが嫌いなわけではないのです。上手に自分と付き合っていきたいなと思います。

 

 

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