理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

仕事には意志が必要だ

 僕と同じくゲーム業界で働いている知人と飲んでいるとき、新人の教育に手を焼いているという愚痴を聞きました。よくある話なのですが、3年目の自分にとっても考えさせられる話だったのでここに書いておこうと思いました。

新人君の仕事の姿勢

 ゲームソフトのホームページに掲載するゲーム画面の撮影を、その新人君は依頼されたそうです。ゲームを魅力的に紹介できるものというオーダーで、自分が良いと思ったところをあげてきてくれという指示でした。新人君があげてきた成果物を見て、どのような意図でこの画面を選んだのかを尋ねたところ、上手く答えられなかったそうです。別のシチュエーションでも、そのようなことが続くのだと残念そうに知人は語っていました。

 知人はあっと驚くような回答を求めていたわけありません。「このゲームではこの機能が一番の推しポイントだと思ったから」「このキャラが一番カッコイイと思ったので映える場面を撮った」などなど、拙くてもいいから新人君が考えたことを教えてほしいと尋ねても、それすら返ってこないとのこと。撮影するのがラクなところを選んだのではないかと知人は暗いトーンで言っていました。

 新人君の上司の仕事の振り方が悪かったのかもしれません(ちなみに知人は直接の上司ではない)。まだ新人なわけだし、これから訓練していけばよいと楽観的に捉えることもできます。しかし、これはけっこう致命的なのではと話していました。どうにかせねばと知人は頭を抱えていました。仕事を与えられたときに、自分なりに考えて自分なりの意図をもって成果物を仕上げるという姿勢、そして自分の仕事にできるだけ大きな価値をのせたいという姿勢は、教えてもらって身に着くものなのだろうかと。

自分のやりたいことが大事

 仕事を与える側・作る側になれないよねという話がさらに続きました。他の業界のことは置いておいて、ゲーム会社というのはゼロから新しいものを生み出すことを生業としている組織です。ゲームそのものでなくても、広告やイベント、僕がいまやっているグッズ制作も、すべてがアイディア勝負の企画の世界。先ほどの新人君が活躍できるビジョンが見えないと知人は嘆いていました。

 新人君の話題から仕事論の話になったのですが、「仕事をする上で自分のやりたいことって大事だよね」という知人の言葉が頭に残りました。これはつながっていると。

 新しい企画を提案するとき、「インスタが流行っているから」「メインターゲットが30代男性だから」などの根拠をもとに有効性を説明していくわけですが、企画の根底には「自分がこういうものを見たい、やりたいから」という意志があるべきだと思うのです。自分の仕事に意図を乗せられない新人君がその領域に踏み込める見込みは薄いなと感じました。

研究室時代からの転換

 かくいう自分も、そういう考え方に賛同するようになったのは最近です。理系の大学・大学院で教えてもらったことが、僕の物事を考えるときのベースになっているので、最初は相入れなかったのです。研究はデータがすべてで、当時はとにかく数字を良くすることに懸命になっていました。自分がやりたいからやる、なんていう独りよがりな行為は成果につながりません。データを解析し、原因を検証して、改善を積み上げていく世界でした。

 しかし、ビジネスをするうえで、何が成功か、どうすれば数字が良くなるのかは、わからないことが多いです。当てになるものが何もない世界。自分がやりたいから、というのは実はとても大きな道しるべになるということに気づきました。

 仕事を進めていく上でも、周りの人に協力をあおぐときは順序立ててロジカルに説明をすることが大事ですが、誰かが本当にやりたがっているということが最終的に人を動かすこともあります。あいつがやりたがっているから手伝うことにした、と言う人を何人も見ました。

 研究の世界でも、根幹には自分はこれがしたいという意志が必要だったのかなと最近思うようになりました。学生のときは教授から与えられたテーマを掘り進んでいけばよかったのですが、そもそもテーマを立てるときは、自分は何がしたいのかを良く考える必要があるはずなのです。「通信技術を向上させることによって人々の暮らしをもっと便利に豊かにしたい」とか、そういう根幹の部分が自分の中で固まっていないと、モチベーションが保てないし、何かトラブルがあったときにブレてしまうなと。

仕事の起点

 自分はこれがしたいという意志を起点に、仕事を考えてみるべきなのだなと思うようになりました。「企業は利益を追求するための組織」という定義に矛盾するところがいまだに引っかかってはいるのですが、現場レベルではそちらの考え方の方が大切なのではと。

 他社との共同プロジェクトに参加したとき、これは誰がやりたいものなのだ?とみんなが疑問に思っていたことがありました。一緒に何かをやるというところが出発点になっているので、何を成し遂げたいか意志を持っている人がいない状況。プロジェクトチームは形になっているものの、軸がぐらぐらしている感覚でした。

 逆に、社長の鶴の一声で動き出す仕事というのは、良いか悪いかは置いておいて軸がしっかりしています。社長がやりたいと言っているから、部下はそれを実現するために奔走する。最終ジャッジは社長が行う。社長のビジョンに共感できていれば明快な仕事になります。

 最近自分はグッズの企画を担当しています。何が売れるかを考えているわけですが、消費者の行動というのは一筋縄では読めません。そんなとき、自分はどんな商品が欲しいかを起点に考えるようにしています。仕事のモチベーションを保つうえでも、それが一番良いのではと最近思っています。

 知人は、せっかく仲間になったのだから、もう少し新人君の面倒を頑張ってみてみると言っていました。

 

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