理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

アズールレーン クロスウェーブ感想 -ソシャゲからコンシューマーへの道筋-

全編ネタバレなしで書きます。 

総評

 アズールレーンクロスウェーブ(以後アズレンCW)は「アズールレーンコンシューマーゲーム」としては正解で、ちゃんとファンの求めているゲームを作ったなというのが僕の感想です。一人のファンとして楽しんでプレイできました。

 アプリ版アズレンを遊んでいる人のみをターゲットにしても、十分に元がとれるという判断をしたのだろうと思います。開発費も宣伝費も控えめにしている印象だったので、収支のバランスをきちんと意識したゲーム作りを行ったのだなという印象です。

 結果として、アプリ版のヘビーユーザーたちはこのゲームを楽しんでいます。仲間内でポジティブな口コミが駆け回り、ターゲット層の購買がブーストされています。

 以降ではファンの求めているものがどのように実現されているかを掘り下げます。そして、ソシャゲ発のコンシューマーゲームとしてその結果がどうだったのかについて書いてみます。

アズールレーン クロスウェーブ - PS4

アズールレーン クロスウェーブ - PS4

 

 

アズレンキャラゲー

 まず前提として、アプリ版アズレンは思い思いに好きなキャラを愛でるキャラゲーの側面が強いゲームということを念頭に置く必要があります。アプリ版には300人以上のキャラが実装されています。突出して強いキャラが少数いるものの、そもそも強キャラが必要になるような高難易度のステージがあまり実装されておらず、プレイヤーは好きなキャラを気ままに育てていけるゲームになっています。

バトル

 アズレンCWの一番のウリは、好きなキャラを自由に動かせるようになっている点でしょうか。

 アプリ版は横スクロール2Dシューティングで、プレイヤーはほぼキャラの移動のみを入力します。スマホに最適化された、単純なゲーム性です。

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 一方アズレンCWは3Dシューティングです。キャラを自由に動かし、自分の好きなタイミングでボタンを押して砲撃できるというだけで、アプリ版のファンとしてはたまらなく嬉しい体験になります。操作性は合格点をあげられる出来だと思ったので、触り心地という点でプレイヤーの心を掴めたのは大きかったと思います。

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 他のアクションゲームと比べてしまうと正直貧相です。ガンダムなどのロボット系のバトルゲームと見た目及び操作性は近しいですが、アズレンCWのバトルは上下方向の動きがないので次元が1つ落ちています。敵の種類は人型か船型の2パターンしかなく、またプレイヤー側の戦法も限られているので戦闘は単調に感じます。

 ただアプリ版のファンはシビアでやりごたえのあるアクションゲームを求めているわけではないので、これで良かったのだろうと思います。アプリ版からの飛距離だけを見ればかなり大きいので、ファンの体験としては上々のものになるだろうという判断のもと、このようなゲーム性にしたのかなと思いました。

 キャラの育成や装備品関係は極力アプリ版と同じ仕様になっているのも、ターゲット層を意識した結果かなと思います。

フォトモード

 このモードの存在が特徴的なところだなと思います。アズレンキャラゲーなので、キャラを愛でる機能が喜ばれるわけですね。

 キャラクターの3Dモデルは、お世辞にも素晴らしい出来とは言えません。ですが、せっかく自由に動かせるモデルがあるのだから、アングルを変えて写真を取りたくなるでしょう?というこの機能はファンに刺さります。

 PS4がネットワーク経由でそのまま各種SNSに繋がるのも追い風になっています。特に日本ではTwitterですね。ひとりで撮影を楽しむだけでなく、仲間にシェアして楽しめるのが現代的です。

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ソシャゲからコンシューマーへ

 ソシャゲ業界は「作れば売り上げが立つ」というバブル期が終わり、有力タイトルのみが売り上げを伸ばし、新規が入りにくい業界になってきました。ソシャゲ人口の拡大はおそらくひと段落していて、熾烈なパイの奪い合いが行われているものと思われます。既存タイトルは次の一手を模索しているはずです。

 そんななかでアズレンCWはそこそこの結果を残したと言えます。初週のソフト販売本数は1位でした(ファミ通参照)。有力な競合がいなかったこと、唯一のライバルのアストラルチェインはダウンロード版の購入比率が高かったことを加味すると手放しで称賛できる結果ではないですが、1位は1位です。立派です。

 コンシューマー版が売れると、アプリの外で売り上げを作ることができます。ゲームの認知度を向上しアプリへの還流を図ることも狙えます。事業拡大の一手としては悪くない結果なのではないかと思います。

 「アプリ版のプレイヤーにターゲットを絞る」「アプリ版からの飛距離を演出する」この2点が上手くいった秘訣でしょうか。高望みをしなかったのが良かったとも言えます。

 アズレンCWを買えばアプリ版で有利になる、という仕組みを導入することもできたはずですが、それをやると変にギスギスしてしまうので、あえてしなかったのかなと思いました。「このゲームをやりたいと思った人に買ってもらう」という当たり前の位置づけにちゃんと収まっているのは開発者にとってもプレイヤーにとってもWin-Winなことかなと思います。

 ゲーム自体はアズレンプレイヤー以外にはオススメできませんが、2019年のゲーム業界の動向を観察するうえでは、1つの面白い事例になっているのではないかと思います。

 

 

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