研究室に学部生を勧誘するにあたってモヤモヤした気持ちになったということを先日書きました。
これに対する答えが見つかったわけではないのですが、研究室へのリクルートに関して先生が興味深いことをおっしゃっていたので考えてみます。
なぜ志望者は減少したのか
今年、僕の所属する研究室を志望する学生が減ってしまいました。何が悪かったのだろうと首をかしげる僕らに、先生が語り掛けます。
「君たちは学部生にビジョンを見せるべきだった」
先生曰く、学生がその研究室に入りたいと感じるかどうかのポイントは、学生たち自身がこれから行う研究活動がどのような意義を持つか、というところにあるそうです。3年前は僕らも研究室を選ぶ身だったのでわが身を振り返ったのですが、いまいちピンときません。続けて先生は言います。
「研究室に入って自分がどんな手順で研究を行うか、どんな生活を送ることになるのか、先生との関係性はどうか、というようなことは些細なことだ」
なんとなく先生の言いたいことが掴めてきました。そもそもの話ですが先生は成績優秀な学生をリクルートしたいと常々考えているタイプの人です。そういう向上心のある学生は、研究室生活の様子などよりもまずは研究の大きなテーマを重視するのだとか。学生に示すべきだったのは、自分たちの研究がこんなに素晴らしい未来へと繋がっているのだ、というビジョンだったというわけです。
通信の分野で例えるなら、「C言語でシミュレーションプログラミングを組んで研究を行っています」というのは研究室を選ぶ立場の学生にとってはどうでもいい情報で、「動画配信が広く普及した現在、通信帯域の枯渇が問題視されるほどデータ量が増えている。将来に渡って高速・高信頼な通信設備を維持するためには我々の持つ技術が不可欠だ」みたいなことを言うとカッコいいわけです。自分が取り組むことになるであろうプログラミングが、社会全体を支える不可欠なインフラに直結するのだと考えると、なんだか興味が湧いてきませんか。先生が僕らに伝えたかったのはきっとこういうことだと思いました。
もちろん、実際にどのような方法で研究を進めていくかも大事だと僕は思います。でも、それだけを学生に紹介したところで真に彼らに響くメッセージにはならないよ、ってことを先生は言いたかったのではないかと思いました。
ビジョンを示せるか
「リーダーはビジョンを示せ」と自己啓発の本に書いてあるのをよく目にします。本を読んだだけでは単なる情報のひとつなのですが、実際の経験から身近な人に教えられるとそこに納得感が生まれる気がします。「おれと一緒にデカいことやろうぜ」と仲間を誘うときは、明確なビジョンを見せられるかがカギなわけです。
先生の教えを実行しようとすると、「研究のビジョンを魅力的に示す」ということと「学生が行う研究がそのビジョンにきちんと貢献できることを示す」ことが難しそうだなと思いました。自信を持ってこれらをプレゼンするためには、自分の研究分野に精通し、いろいろな角度からこの分野を俯瞰できているかが問われるわけです。
今年、見学に来た学部生の対応は後輩に任せていました。自分は来年卒業するので、来年研究室に入ってくる学生とは直接の関わりがありません。だから僕らが積極的にがんばる必要はないだろうと思って身を引いていました。しかし、研究室在籍期間が一番長い僕らこそが、学生にビジョンを示してやらなければならなかったのだなと反省しました。自分の果たすべき役割を放棄してしまっていたのかもしれません。
研究室に関するその他の話。
いろんなタイプの研究室があるので見極めが大事です。
理系院生に夏休みはあるのか。
そもそも休日はあるのか。
ビジョナリー・カンパニーはめっちゃ面白かったですね。
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