理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

ゲーム会社の人間が生まれてはじめてディズニーシーへ行って感じたこと

 生まれてこのかた東京ディズニーリゾートに足を踏み入れたことがなかったのですが、先日ついに行く機会を得まして、数人の友人と東京ディズニーシーへ行ってきました。朝から晩まで歩き回って、ショーを見たりアトラクションに乗ったりとへとへとになるまで遊びました。単純に楽しむだけでなく、自分の仕事に繋がっているように見える点も多く、ディズニーが長年をかけて培ってきたノウハウに関心しきりの1日となりました。忘れないうちに書き残しておきたいと思います。


① 目に飛び込んでくる景色の作り方

 初っ端から感動したことがありました。シーに入場して広場を抜け、メディテレーニアンハーバーに足を踏み入れた瞬間のことです。アーケードをくぐるとともにぱっと視界が開けて、手前に水面がきらめく港、奥に赤く光る火山、奥には大きな船、異国情緒あふれる街並…と異世界の景色が一気に展開されました。あの景色は圧巻で、今でも目に焼き付いています。

 余計なものを配置して奥の景色を邪魔しないように注意深くデザインされているのが伝わってきました。ディズニーシーの世界を特徴づける要素をそこここに散りばめながらも、全体として統一感がとれている。まるで一枚の絵のようでした。足を踏み入れる手前にはあえてアーケードを用意し、視界を遮ってから一気に開放するのもニクイ演出です。

 景色が見えた瞬間、思わず「うわー!」という声が漏れてしまいます。違う世界に来たんだということを五感全体で感じられて、一気にこのディズニーの世界に没入し、ワクワク感が高まっていきました。テーマパークでお客さんに真っ先に体験させるべきことを、景色だけでやってのけるわけです。恐れ入りました。

 他にも、エリアの切り替えのときに目に飛び込んでくる景色はどこもお見事で、ミステリアスアイランドに入ったときや、アラビアンコーストに入ったときに飛び込んできた景色がとくに印象に残っています。

 

 RPGを作るときに大いに参考にすべき事例だと思いました。いかにプレイヤーをその世界に没入させワクワク感を与えられるかという要素は、ユーザ体験の深いところに効いてくるでしょう。新しい街やダンジョンに到着したときに、最初にどんな景色を画面に広げるか。マップを作るときにはそこにもきちんと意識を向けながら作るべきだと思いました。

 新しい街に入ったとき、システム側が勝手にカメラを動かして、ここにはこんなものがあるよ、と教えるゲームもありますね。それは自由自在に視点を動かせるゲームだからことできる技で、もちろん悪いことでは全くないと思うのですが、人間の目の動きではありません。パッと目に入る全景というものにも注意を払っていきたいなと思いました。特に、VRのゲームは「自分自身の等身大の視点」というものを意識させられることになると思うので、ディズニーで味わえる実体験は大いに参考になりそうです。

 ゼルダの伝説BoWでは、遠くに見えているタワーや山に実際に登ることができてしまうので、景色の作り方も慎重にならざるをえなかったという話を開発者インタビュー記事の中で読んだ覚えがあります。今までは、奥に広がる景色はハリボテというゲームも多かったですが、オープンワールドのゲームでは誤魔化せなくなります。景色のデザインはますます重要になってきそうです。

 

② 背景知識とコアユーザ・ライトユーザ

 それぞれのエリアや1つ1つのアトラクションにはしっかりとしたバックボーンとなるストーリーがあって、目を凝らすとその要素が随所に散りばめられているという話を聞きました。ディズニーに詳しい友人が一緒にいたので、そのうんちくを聞いているだけで待ち時間があっという間に過ぎていきました。

 大部分のゲームは起承転結のあるストーリーをベースに作られているわけですが、そのストーリーの見せ方、およびライトユーザとコアユーザへ向けてどのようなコンテンツを用意していくかというところを考えさせられました。

 ディズニーリゾートにはアトラクションの背後にあるストーリーを理解できない小さな子供もお客さんとしてたくさん来場します。大人であっても、テーマパークには小難しい話など求めていなくて、単純にアトラクションを楽しめれば良いと思っている人もいるでしょう。そういう人たちに、「このアトラクションの背景にはこれこれこういうお話があって…」と講釈を垂れるのは悪手だと思うのです。彼らにとってはノイズにしかならず、満足度は低下してしまいます。アトラクションだけではなくショーの中でもストーリーは最小限に抑えられていました。

 ディズニーは、背景知識を持っていない人には無理にそれを求めず、身に着けさせる努力もせず、単純にテーマパークの雰囲気を肌で感じてもらい、アトラクションを楽しんでもらえる場所になっていると思いました。そういう楽しみ方で満足してくれるのならそれでいいし、もっと知りたいと思った人が深堀りしてみると意外といろんな発見がある。そういう構造になっているのかなと僕なりに考えました。

 

 ゲームっぽく捉えるならば、バックボーンとなるストーリーをあえて引き算してコンテンツを作り、コアユーザ向けにはそのバックボーンをやり込み要素として用意している構図とでも言えるでしょうか。ゲームに限らず、エンターテインメントの世界におけるコンテンツを作る際には、無理に足し算をするよりも、何かを引き算している方がすっきりとしてわかりやすいものになります。映画の作り方に似ていて、大量の設定を用意してお話を形作るものの、実際に映画のシーンとして映るのはその一部になる、みたいな感じです。

 このストーリーを引き算してしまうディズニーのやり方は、ゲームにはなかなか取り入れられないなと思いました。そのゲームのストーリーが100あったとしたら、プレイする人全員に100を見てほしいと思い導線を作るのが普通です。ライトユーザのために何かを引き算するということはせず、コアユーザのためにやり込み要素を足し算する。そのためライトユーザにとってはやり込み要素がノイズだと捉えられてしまうこともあるでしょう。コアユーザにとっても、やり込み要素は付け足しで作られるため本筋とは関係のない要素になりがちで、どうしても作業感が強くなってしまう。そうではないゲームもたくさんありますが、意識せずに作るとこういう事態に陥る可能性があるなと思います。

 またまたゼルダBoWの話になってしまって恐縮ですが、このゲームではストーリーがあまり明示されない代わりに、ウツシエの場所を巡ってリンクが自分の失われた記憶を集めていくという要素があります。ストーリーを「集める」という感覚でゲームがデザインされており、ストーリーのムービー自体をユーザのご褒美とするという、今までになかったゲームデザインに挑戦されています。こちらのファミ通のインタビュー記事に詳しいです。

 一方でこれはディズニーだからこそできる離れ業だと考えることもできます。来場者がだいたいの話の流れを知っている前提でコンテンツを組み立てることができるのはディズニーの大きな強みです。ゼロからスタートするIPには真似できるものではないでしょうね。

 


③ 関連商品の展開

 お揃いのTシャツを着て来場しているお客さんをたくさん見ました。せっかくディズニーに来たのだから、何かグッズを身に着けていこう。そういう動機はよく理解ができるところです。

 ゲームがある程度人気を博してくると、そのキャラを使った関連商品を展開するパターンは多いです。しかしゲーム会社がやっている商品の横展開と、ディズニーのやっていることは似て非なるものだなと思いましたし、ゲーム会社は安易にディズニーの真似をしようとしてはいけないなとも思いました。

 ディズニーの場合、テーマパークに行くという行為を中心にして商品を作ることができるので、来場するときに持っていきたくなる商品を作ればシナジーを得ることができます。これが本当に強力なビジネスモデルだなと思いました。Tシャツが可愛くて思わず買ってしまったので、ディズニーランドに遊びにいく計画を立てよう、という風にお客さんを動かすことができます。パーク外のディズニーストアなどで商品を購入させたことを、そのまま来場したいという動機につなげることができるというわけです。

 一方ゲームのキャラクターが描かれたTシャツはなかなか着ていく機会がないですよね。ゲームのオフラインイベントだとか大会などには来て行けますが、それ以外ではパジャマになりがち。ゲームをプレイするというシーンに結び付けられないので、Tシャツを買ったことをビジネスの根幹には繋げることができません。Tシャツを例に挙げましたが、それ以外のものについても同様で、ディズニーランドに持っていくために関連商品を買うということはあっても、ゲームをプレイするために関連商品を買うということは稀です。

 ビジネスモデルの違いという大きな溝が横たわっていることを理解し、「ディズニーみたいに横展開しようよ!」なんていう甘い考えは捨てた方がいいなと改めて思いました。

 

終わりに

 ディズニーに詳しい方からするともっと違ったものが見えているのかもしれませんが、この間初めてディズニーに行った自分からするとこれだけのものが浮かびました。異業種から参考にするというのは重要なことなので、これからも機会があれば通って発見を続けたいですね。誘ってくれた友人に感謝です。

 

 ゲームとは関係がないのですが、素晴らしいプロ意識でおもてなしをしてくださるスタッフさんがほぼ全員バイトだというのも驚きましたね。昔この本を読みましたが、人材育成の面でもディズニーが積み重ねてきたものの偉大さを思い知りました。

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