理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

研究室配属希望者にはビジョンを見せろ

 研究室に学部生を勧誘するにあたってモヤモヤした気持ちになったということを先日書きました。

 これに対する答えが見つかったわけではないのですが、研究室へのリクルートに関して先生が興味深いことをおっしゃっていたので考えてみます。

なぜ志望者は減少したのか

 今年、僕の所属する研究室を志望する学生が減ってしまいました。何が悪かったのだろうと首をかしげる僕らに、先生が語り掛けます。

 「君たちは学部生にビジョンを見せるべきだった」

 先生曰く、学生がその研究室に入りたいと感じるかどうかのポイントは、学生たち自身がこれから行う研究活動がどのような意義を持つか、というところにあるそうです。3年前は僕らも研究室を選ぶ身だったのでわが身を振り返ったのですが、いまいちピンときません。続けて先生は言います。

 「研究室に入って自分がどんな手順で研究を行うか、どんな生活を送ることになるのか、先生との関係性はどうか、というようなことは些細なことだ」

 なんとなく先生の言いたいことが掴めてきました。そもそもの話ですが先生は成績優秀な学生をリクルートしたいと常々考えているタイプの人です。そういう向上心のある学生は、研究室生活の様子などよりもまずは研究の大きなテーマを重視するのだとか。学生に示すべきだったのは、自分たちの研究がこんなに素晴らしい未来へと繋がっているのだ、というビジョンだったというわけです。

 通信の分野で例えるなら、「C言語でシミュレーションプログラミングを組んで研究を行っています」というのは研究室を選ぶ立場の学生にとってはどうでもいい情報で、「動画配信が広く普及した現在、通信帯域の枯渇が問題視されるほどデータ量が増えている。将来に渡って高速・高信頼な通信設備を維持するためには我々の持つ技術が不可欠だ」みたいなことを言うとカッコいいわけです。自分が取り組むことになるであろうプログラミングが、社会全体を支える不可欠なインフラに直結するのだと考えると、なんだか興味が湧いてきませんか。先生が僕らに伝えたかったのはきっとこういうことだと思いました。

 もちろん、実際にどのような方法で研究を進めていくかも大事だと僕は思います。でも、それだけを学生に紹介したところで真に彼らに響くメッセージにはならないよ、ってことを先生は言いたかったのではないかと思いました。

ビジョンを示せるか

 「リーダーはビジョンを示せ」と自己啓発の本に書いてあるのをよく目にします。本を読んだだけでは単なる情報のひとつなのですが、実際の経験から身近な人に教えられるとそこに納得感が生まれる気がします。「おれと一緒にデカいことやろうぜ」と仲間を誘うときは、明確なビジョンを見せられるかがカギなわけです。

 先生の教えを実行しようとすると、「研究のビジョンを魅力的に示す」ということと「学生が行う研究がそのビジョンにきちんと貢献できることを示す」ことが難しそうだなと思いました。自信を持ってこれらをプレゼンするためには、自分の研究分野に精通し、いろいろな角度からこの分野を俯瞰できているかが問われるわけです。

 今年、見学に来た学部生の対応は後輩に任せていました。自分は来年卒業するので、来年研究室に入ってくる学生とは直接の関わりがありません。だから僕らが積極的にがんばる必要はないだろうと思って身を引いていました。しかし、研究室在籍期間が一番長い僕らこそが、学生にビジョンを示してやらなければならなかったのだなと反省しました。自分の果たすべき役割を放棄してしまっていたのかもしれません。

 

 

研究室に関するその他の話。

 

いろんなタイプの研究室があるので見極めが大事です。

 

 

理系院生に夏休みはあるのか。

 

そもそも休日はあるのか。

 

 

ビジョナリー・カンパニーはめっちゃ面白かったですね。

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

 

 

 

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他人を自分の組織に勧誘するのが怖い

 学部の3年生が次年度から所属する研究室を決める時期です。

研究室見学で胸に引っかかったもの

 うちの学科には、3年生が各研究室を回って、先生や院生から説明を受けるという年中行事があります。僕ら院生側は一塊になってぞろぞろとやってくる学生に対して、自分の研究室がどんなテーマを扱っているかを説明し、研究室の居心地が良いとか先生が優しいとか、学部生にとって魅力的に聞こえるであろうポイントをアピールします。このアピールでは当然耳障りの良いことばかりを言います。ウソは言いませんが、都合の悪いことについてはあまりコメントしません。時間も限られていますし。

 興味がある研究室が見つかったら、学部生は個別に研究室を訪問してさらに情報を得ようとします。興味を持ってくれたのは僕らも嬉しいので、喜んで対応します。志望者が定員枠を超えると選抜になるのですが、志望者が少ない方が僕らは悲しいのでがんばって勧誘します。

 去年は修士の1年生としてこの行事に参加しました。枠を超える後輩がうちの研究室を志望してくれたので、僕としては満足でした。しかし、今年はちょっと胸に引っかかるものがありました。

最後は自分で決めるんだぜ

 先日、うちの研究室と別の研究室で迷っている学部生と話しました。去年は何も考えずに自分の研究室の魅力をどんどんアピールして気持ちをうちに傾けようとしていた気がするのですが、今年はなんだかその子の背中を押すような言葉が出てきません。もしかしたら彼には合わないかもしれないという考えが頭をよぎり、無責任に自分の研究室をプッシュすることが、実は彼の人生を大きく変えてしまうことになるかもしれないという不安にかられました。

 研究室生活が長くなってきて、周りの研究室との違いが歴然と見えるようになってきました。うちの研究室は先生が手厚く指導してくださるおかげで、僕は何度も国際学会に行くことができました。一方で在籍期間の中で一度も国際学会に行かない研究室もあります。当然、僕の研究室の方が成果を求められますし、忙しい時期はハゲそうになります。

 「どっちが良い研究室か」という話ではなくて、研究室によって修士の生活は大きく変わるということです。人それぞれ、好みの問題なのです。そう考えると強いことがなにも言えなくなって「最後は自分で決めるんだぜ」みたいな、ちょっと突き放した言い方になってしまいました。

新卒担当の人事さんのさじ加減

 今年、僕の気持ちが去年とちょっと違うのはきっと、就活を経験したからだと思います。研究室は内々定を出した企業。僕は人事。入社を迷っている新卒に対して、絶対にうちに来いとは軽々しく言えません。だって、彼の人生です。彼の人生を僕の手で歪めてしまったら、その重みに僕は耐えられません。

 僕が就活をしているとき、「最後は自分で決めるんだぜ」というニュアンスの言葉は少なからず言われたような気がします。しかし冷たく突き放されたという印象を抱いた覚えはなくて、人事さんのさじ加減がお上手だったのだろうと今は思います。

 それと同時に、「絶対にうちに来い」といったような強い勧誘もされませんでした。よく覚えているのは、「君がこのフロアにデスクを構えて仕事している様子が目に浮かぶんですよね」と言われたことです。当時は嬉しくなったのですが、今考えると直接誘っているわけではなく、なんだかぼんやりとした表現だなと思います。

他人の人生を背負い込めるか

 僕が出会った人事さんがどうなのは知りませんが、僕が研究室の勧誘に躊躇してしまう理由は、他人の人生を背負い込む勇気がないからだと思います。僕の手で他人の人生を左右してしまうのは非常に怖いです。僕は自分の人生で手一杯。余裕がないのです。

 もちろん、最後に決めるのは決断を下す人自身なので、勧誘する側が気に病む必要はないという考え方もあると思います。しかし少なからず影響を与えてしまう以上、真摯に向き合う必要が僕はあると思うのです。

 採用担当でなくとも、企業の一員として就活生に関わる機会が今後僕にもあるかもしれません。そうなったとき、僕はどのような対応ができるでしょうか。就活生が求めるもの、企業が僕に望むこと、そして自分の本心。それらに上手く折り合いをつけられるでしょうか。 

 結局、今年うちの研究室を志望した学部生は去年よりも減ってしまいました。うちを志望してくれた学生がきちんとうちの魅力を理解してくれていること、そして他の研究室を志望した学生が自分にぴったりの研究室を見つけられたことを、僕は祈ることしかできません。

 

色んなタイプの研究室があるよ、ってことを以前書きました。

 

僕がどんな感じで研究室を選んだかも書きました。

 

 

 

 

 

決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)

 

 

 

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1日で回る鹿児島・桜島観光の旅

 鹿児島で開催された学会に出席してきました。諸事情がありまして、一日観光することができたのでその模様を書いておきます。

 自由時間は朝から夕方まで。鹿児島中央駅近くの宿を出発して、16時半の新幹線に間に合うようにプランを立てました。突貫で作ったプランでしたが、歴史・山・海を堪能することができた良い旅になりました。鹿児島は比較的コンパクトにまとまった素敵な街だなあと思いました。

旅程

9:10 鹿児島維新ふるさと館

10:30 西郷隆盛

11:00 城山展望台

11:15 西郷洞窟

11:45 桜島フェリー

12:15 桜島バスツアースタート

13:15 桜島バスツアー終了

13:30 昼食

14:00 マグマ温泉

15:00 桜島フェリー

15:30 天文館通り

16:00 鹿児島中央駅到着

鹿児島維新ふるさと館

 鹿児島中央駅から10分ぐらい歩いたところにある、鹿児島維新ふるさと館が最初の目的地。近かったのでまずはここから旅をスタートさせました。様々な資料と共に明治維新の立役者たちの活躍を振り返る資料館です。入場料は300円。

 9時に開館します。9:15に明治維新の経緯を描いたロボット劇がスタートします。なかなか珍しい展示なのでここに訪れるなら見ると良いと思いますよ。鹿児島出身の西郷隆盛大久保利通にスポットを当てて、維新の最初から最後までをさらっとおさらいできます。史跡を訪れるまえにここを見学しておくと、歴史の復習になってよいと思います。

 ロボット劇を見終わったら館内を一周しました。鹿児島ということで西郷さん推しが目立ちます。

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 篤姫も鹿児島の人なのですね。こんな感じで貴重な展示物もあります。

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 館内をぐるっと回って維新のお勉強が済んだら、次は城山展望台を目指します。その途中に西郷隆盛の銅像があるのでまずはそこまで歩きます。20分ほどで到着。

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 引き気味で撮ったのでなんだか小さく見えますが、割りとデカイ像でした。顔が縦長。そしてやたらと青い。大きな道路の真正面にあります。

城山展望台に登る

 西郷さんに挨拶を済ませて城山に登ります。ここは西南戦争の激戦の地です。西郷さんが命を落とした場所だそうです。市街地にあるのですが意外と高い。

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 坂道をがんばって登ります。僕の前におじいさんが歩いていたのですが、健脚な方だったので追い付けませんでした。緑に囲まれた山道を歩くのは良い気分転換になりました。

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 20分ほどかかって頂上に到着。真正面に桜島が横たわる雄大な景色です。晴れていてよかったです。ここは夜景がすごく綺麗で「東洋のナポリ」と呼ばれているのだとか。まずナポリが僕にはピンときませんが。頂上にはお土産屋さんがありました。バス停もあるので歩かなくても実は大丈夫です。

 登ってきた道とは違う方向に降りると、西郷隆盛洞窟があります。西郷さんは西南戦争のときにこの洞窟に5日ほど滞在し、ここを出た直後に流れ弾に被弾。自害したそうです。

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 中をちらっと覗いたのですが、そんなに深い洞窟には見えませんでした。こんなところに5日もいたのかと驚きです。維新の英雄として語り継がれている西郷さんですが、寂しい最後を迎えてしまったのかと思うとしみじみします。暗かったので奥まで見えなかっただけかもしれませんが。

 ここから桜島へ行きました。城山からフェリー乗り場まではそこそこ遠いですが、天気が良くてお散歩日和だったので歩きました。30分ぐらいで着きました。

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 24時間運行していて、昼間は15分おきにフェリーが出ています。非常に便利ですね。料金も160円と格安。

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 桜島との距離はこれぐらい。10分ぐらいで着きます。近いですね。風が強かったので船の上は寒かったです。

桜島観光

 桜島をぐるっと回りたいところでしたが、意外と大きな島なので歩きではとても無理でした。サクラジマアイランドビューというバスが出ていて、これが便利そうだと思って乗り込みました。1時間ほどで見どころを回ってくれるツアーバスです。料金は500円。

 驚きだったのはこれ。

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 ピカソゲルニカかなと思ったのですが、この像のモデルは長渕剛さんらしいです。島民が6000人しかいない桜島で75000人の観客を集めてライブをやった記念なんだとか。しかもオールナイトで。わけがわからないですね。観光地に新たな観光スポットを作ってしまうなんてすごいお方です。

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 ここが桜島で最も高いところ(4合目)にある展望台です。桜島が眼前に迫ってきます。これ以上は近づけませんでした。一応今も活動が続いている火山ですからね。

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 逆に市街地側はこんな感じ。ずいぶん遠くまで来たのだなあとしみじみ。

マグマ温泉で癒される

 バスツアーが終わってフェリー乗り場に帰ってきました。ご飯が食べれて温泉に入れる施設があるとのことで歩いていきました。

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 国民宿舎レインボー桜島と桜島マグマ温泉です。お腹ペコペコだったのでまずはレインボーの方でご飯を食べました。

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 桜島は大根が有名だそうです。だから期間限定のブリ大根定食が食べたかったのですが、この日はすべて売れてしまって食べられませんでした。というわけで僕が頂いたのは鹿児島産の豚を使ったとんかつ。揚げたてさくさくでおいしかったです。お値段は観光地価格でしたが満足です。 

 満腹になったら次は温泉。素晴らしいですね。急遽プランを立てた旅でしたが、まさにこういう旅がしたかったんだという充実の内容です。僕は温泉がすごく好きなのです。

 桜島マグマ温泉の入浴料は300円。バスツアーに乗るために買ったチケットで50円引きになりました。湯の中に茶色つぶつぶが浮かんでいてびっくり。今までいろいろな温泉に入ってきましたがこんなのは初めてでした。とはいっても一つ一つの粒は柔らかくて、感触はなにもありません。不思議な湯でした。

 温泉に入っていい気分でしたが、少し時間が迫ってきたので帰ることにします。フェリーに乗って本島に帰還。フェリー乗り場から鹿児島中央駅まではけっこう距離があるのですが、ちょうどいい時間になりそうだったので歩くことにしました。通り道に鹿児島最大の繁華街で洗う天文館通りがあったのでキョロキョロしながら通り過ぎました。

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 旅の締めくくりに大久保利通の像を見て鹿児島中央駅に到着しました。駅に着いたのが16時過ぎ。1日でたっぷり遊べて大満足でした。学生には特に嬉しいことですが、お金も大して使っていません。歴史と自然に包まれたおかげで良いリフレッシュになりました。

 

 

そのほかの学会旅行記。

別府編。

 

フィレンツェ編。

 

カンヌ編。

 

 

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個性が希少性(確率)にのみ依存するソシャゲはつまらない

 最近、イングレスをプレイし始めました。イングレスとその他のソシャゲが大きく異なっている点は、プレイヤーの個性の作り方だと思います。

イングレスは生活圏が個性になる

 プレイヤー同士が相互干渉するソーシャルゲームにおいて、プレイヤーがどのような個性を発揮できるかというポイントは、ゲームの面白さに直結するのではないかと僕は考えています。全員同じ個性ならば他のプレイヤーと協力する意味が余りありません。対戦も盛り上がりません。個性があるから他のプレイヤーとつながる価値があるのです。

 イングレスはスマホGPS情報を用いて、リアルワールドで陣取り合戦をするゲームです。ポータルと呼ばれる拠点が設定されており、プレイヤーはポータルに近付いてそのポータルを陣取ったり、敵から奪還したりします。陣取った複数のポータルを繋ぐことでエリアを陣取ることもできます。

 しばらくイングレスをプレイしていると、他のプレイヤーがあまり手を付けないポータルが見えてきます。そのポータルを生活圏の中に収めているプレイヤーが少ないのでしょう。ゲームを始めたばかりの弱い自分でも、そのポータルは長く陣取ることができます。これはイングレスにおける僕の個性と捉えてもいいはずです。このゲームではプレイヤーの生活圏がそのまま個性になるのです。

ガチャは個性を確率に依存させる

 他のゲームではどうなっているでしょうか。たくさんソシャゲをやってきたわけではないのですが、多くのゲームが「希少性」に個性を求めていると僕は思います。個性が単に確率で決まっているのです。ガチャ制度を取り入れているゲームがわかりやすい例で、入手確率の低いアイテムがいくつかあって、どれを持っているかが個性になるというわけです。

 個性が希少性のみに依存するゲームは、端的に言って魅力がありません。ざっくり言うと問題点は以下の2つ。

 1つ目は、ゲームを続けるモチベーションが確率に支配されてしまうということです。強いアイテムを引ければ勝ち、引けなければ負けという単純な構図では、単にさいころを転がして大きい目が出たら勝ちというゲームをやっているにすぎません。正直面白くないです。

 2つ目は、リソースを持っている奴が強い、というマッチョな世界に汚染されてしまうということです。ここでいうリソースは時間とお金です。時間をかければアイテムドロップの試行回数が増えたり、ガチャを引ける回数が増えます。もっと簡単にガチャを引くには課金が一番の近道です。運営側としてはこれでいいのかもしれませんが、無課金のライトユーザを繋ぎ止められないゲームはすそ野が広がらず、ジリ貧の展開になること間違いなしです。

パーソナル情報、もしくは縛りを

 確率に依存しない個性を作る方向性の1つはイングレスを参考にすることです。従来の据え置きゲームや携帯ゲームは、個性を発揮しにくい分ゲーム性が練られていたと思います。一方で、ソシャゲは一人に一台が紐づけられた非常にパーソナルな端末(スマホタブレット)上で動きます。スマホの中には個性の元となる個人情報が山ほど蓄えられているのです。プライバシーに細心の注意を払ってその宝の山を掘り返し、面白いゲームが出てきてくれたらいいのになあと願っています。

 もうひとつの方策は、PCのオンラインゲームを参考にすることです。細分化された役割を作ったり、パラメータの振り方で緻密な調整ができたりすれば、それが個性になります。しかしこちらはライトゲーマーにはなかなか受け入れられず、また、手軽さをウリにするスマホゲームとは相性が悪いかもしれません。

 ガラケーの時代に僕がプレイしていたエルアークというゲームは、この辺を上手く解決していたゲームでした。一定時間経つとゲームが進む時間更新制度を取り入れたエルアークでは、限られた時間を有効活用するために個々のプレイヤーがお互いの個性を活かして冒険していました。一定時間更新という縛りを設けたことで、個性が発揮しやすくなっていたのでした。いろいろなことができるようになってきたソシャゲの世界ですが、逆に大幅な縛りを入れてみると、面白いシステムが出来上がる気がします。

※エルアークについてはこちらを参照
エルアークをプレイしてた人は反応してくれ、思い出とか書くから - 大学院生のネットワークなブログ

 

 

 ガチャを配備したソシャゲは、課金モデルが単純で作りやすいのだと思います。一方でイングレスやオンゲは開発に時間とお金がかかる一方で収益化しづらい。道は険しいでしょう。でも、ここ最近の停滞感をぶち壊す新しいゲームは、きっとガチャを採用しないだろうと密かに賭けております。

 

その他、ゲームについて考えたこと。

 

 

Ingress徹底攻略完全日本語ガイド

Ingress徹底攻略完全日本語ガイド

 

 

【超ポケダン】全クリしたからダンジョン難易度ランキング作った

 ポケットモンスター不思議のダンジョンを全クリしました。すべてのポケモンとconnectedしただけではなく、進行に関係ないダンジョンもすべてクリアしました。僕が苦労したダンジョンをランキング形式で発表して、簡単な攻略情報も添えます。誰かの参考になれば嬉しいです。

  不思議のダンジョン系では珍しくレベルが引き継がれるこのシリーズでは、自分のレベルとダンジョンの難易度がミスマッチしてしまうとまるで歯がたたなくなります。全く同じ難易度であれば後から挑戦するダンジョンの方が(自分のレベルが上がっているので)簡単に感じます。僕が難しいなと思ったダンジョンも、あとからやれば簡単に感じるでしょうから、そのへんはご了承ください。

 

ポケダンのおすすめパーティは天候パです。強いパーティを探している方はこちらを参考にしてください

ytera22.hatenablog.com

 

 

7位 ドラゴンゲート

 ダンジョンで出てくる敵はそれほど強くありませんが、ボス3連戦はなかなかハードです。回復アイテムが切れると全滅もあり得ます。オレンの実や復活の種は普段以上に持って行くとよいと思います。3匹とも強力な範囲技を持っているので、状態異常などを駆使してなるべく攻撃を封じて戦いたいところです。最後のメガレックウザは永続的に天候を書き換えられないので、僕のように天候パーティで挑戦すると苦しい戦いになります。 

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6位 アッカの岩場

 草の大陸レベル5ダンジョンの一角。難易度は「かなり難しい」ですが、そこらの「超むずかしい」ダンジョンよりも苦労しました。レベル5ダンジョンはパーティの選定が難しいですよね。技を全然覚えていないポケモンもいれば、たくさん技がありすぎて毎回ランダムで変わるポケモンもいます。強いポケモンを上手く見つけられればあまり苦労せずクリアできると思います。

 自分のパーティはレベル5スタートですが、敵のレベルはそこそこ。ナイトヘッドで22ダメージ受けたことがあるのでたぶんそのへんに設定されているのでしょう。オコリザルマフォクシーフシギソウグライオンドラピオンモロバレルカエンジシあたりに注意しましょう。また、メタモンヌケニンがかなり出てきます。モンスターハウスも多め。

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5位 ハラヘラーズ4ダンジョン

 4つのダンジョンはほとんど難易度が変わらないのでまとめました。40Fを超える長丁場であり、相手のポケモンのレベルが高いハイレベルなダンジョンです。また、フロアがとてつもなく広くて時間がかかります。ひとつダンジョンをこなすたびに自分のポケモンのレベルがかなり上がるので、あとに挑戦するダンジョンほど簡単に感じるでしょう。だから4つの難易度に順位をつけるのは難しいところです。

 レベル60ぐらいのポケモンで化石木の山に挑戦した時は全然レベルが足りておらず、ボコボコにされたのですぐに諦めました。難しいと感じたら他のダンジョンを片付けた後で挑戦しましょう。

 4つのダンジョンの難易度を無理やり順位付けするならこんな感じかな。

4位:オーロラの果て

3位:枯れ葉の道

2位:ザラザラトンネル

1位:化石木の山

 「オーロラの果て」で危険なのはゴチミルのマジックルームでしょうか。マジックルーム状態になると道具が使えなくなるのでふっかつのタネを持っていても使用できなくなってしまいます。もちろん回復もできません。発動してしまったら細心の注意が必要です。

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 「枯れ葉の道」でもクレッフィがマジックルームを使ってきます。部屋をぐるぐる回って待ち伏せしてくるポケモンがたまにいますが、ここではドリュウズが「たがやす」でラフレシアの攻撃を上げて部屋技の花吹雪を撃ってきます。晴れパを使っていたので相手のラフレシア葉緑素で2回攻撃してきて大変でした。

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 「ザラザラトンネル」は部屋技を使ってくる相手が多いです。特にドレディアはフラフラダンスでこちらのポケモンを全員混乱にさせたあとで花吹雪を連発してくる恐ろしいポケモンです。ドレディア以外にもキレイハナデデンネレントラーマイナンあたりが部屋技を使ってきます。

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 「化石木の山」は待ち伏せが怖いです。放電を使うラクライシビビール、さらに銀色の風を使うガーメイルが1部屋に待ち構えていて、足を踏み入れた瞬間にフルボッコにされます。他にもリザードン、ダクトリオ、ヌマクロートリトドンなどが部屋技で狙ってきます。レディバ4匹が固まって寝ていることがあり、1匹起こすと神秘の守りやリフレクターや高速移動を使って全員が眠りから覚めます。起こして良いことはなにもないので素通りしましょう。

 

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4位 天空遺跡

 ハラヘラーズ4ダンジョンをクリアする前に挑戦していたので非常に難しく感じました。レシラム・ゼクロムとの2対同時バトル。高威力の範囲技を2匹で撃ちまくってきます。特定のタイプで無効化できるミュウツーなどと違って、2匹いるので補完されてしまいます。探せばもっと良いポケモンがいるのかもしれませんが、自分で思いついた組み合わせでなんとか勝てました。

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 パーティはバリヤードフライゴンヒードラン。作戦はバリヤードで両壁貼ってフライゴンヒードランの大地の力で押しまくるというもの。バリヤードはドラゴン技無効、フライゴンは電気無効炎半減、ヒードランは炎無効ドラゴン半減です。壁を貼っておけば一発KOはなくなります。大地の力を合わせて20発ぐらい撃ったところで両方沈みました。

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 ラピスに頼れないのでアイテムを使いまくりです。状態以上が長続きしないので、「なまけの枝」はなかなか有用です。「ふらふらだま」や「バクスイだま」も1ターンは稼げるので有効です。 

3位 運命の塔

 おそらく最後に挑戦することになるダンジョン。僕はここをクリアして引退しました。

 ハラヘラーズの4ダンジョンよりもさらに一回り相手のレベルが高くなった印象がありました。自分のパーティはレベル80ほどでしたが、一発KOされることもしばしば。威力の高い攻撃(火炎放射やハイドロポンプ)で弱点をつかれたり、自分の能力が下がっているときに食らってしまうとやられます。

 フロアに出てくるポケモンはタイプが統一されています。5Fごとに変わります。ラピスの揃っていない序盤に、自分のパーティが苦手なタイプがくるときついことになります。復活の種やオレンの実はたくさん持って行ったほうがいいかもしれません。アイテムはけっこう豊富なので最後の方には余ります。

 99Fの長丁場です。いかに集中力を切らさないようにするかがポイントかもしれません。ハラヘラーズと比べるとフロアがすこし狭くなります。なのでクリアにかかる時間はあまり変わらないかもしれません。

 5F降りるたびに背景と音楽も変わるので飽きずに楽しめるかと思います。特に今作は音楽が素敵なので、音楽の振り返りができてよかったです。敵ポケモンの種類も豊富で、まさに最後のダンジョンといった感じです。

 難しいと感じたらレベル上げをしましょう。持ち込む道具も工夫しましょう。レベル5固定ダンジョンと違ってそれができるので簡単かなと思いました。

2位 聖なる跡地

 草の大陸レベル5ダンジョンの一角。パーティは1匹固定、アイテム持ち込みなし、救助禁止ということで一番制約が厳しいダンジョンです。他の不思議のダンジョンゲーム(トルネコシレンなど)をやっている人からするとこの条件はむしろ普通なのですが。

 序盤で良いリングルと良いラピスが揃えば一気に楽になります。アイテムがたくさん落ちており、特に「たま」系のアイテムはここで初めてみる強力なものばかり。逆に回復アイテムはほとんど落ちていないので、「ダメージをもらうぐらいだったら玉や枝を使って切り抜ける」ことを徹底しましょう。リンゴは多いので自然回復も積極的に。

 僕はヒードランでクリアしました。技が豊富で、熱風、大地の力、マグマストームアイアンヘッド、原始の力、炎の渦の中からランダムで4つが選ばれるようです。熱風と大地の力を両立するのが一番ありがたい。原始の力は積み技気分で使えます。

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 ポイントはレベルが高い敵ポケモンをきちんと覚えること。例えばグライオンやムーマージは一見強そうですが、レベルが高くないので苦労しません。一方で、ゴチミルフシギソウは進化前なのにレベルが高くて強いです。僕的に危険度が最高レベルなのはモロバレルドラピオンカエンジシ

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 モロバレルはレベルが高く高耐久かつ攻撃力も高め。光合成や吸い取るや根を張るで回復してきます。

 ドラピオンは爪とぎとツボを付くで自身を強化し、4マス連続技のミサイル針で遠くから狙ってきます。

 カエンジシはこの低レベル帯にもかかわらず破壊光線をぶっぱなしてくる鬼畜野郎。効果いまひとつのヒードランでも8割ぐらいもっていかれます。

1位 ニャンダフルな人生

 ニャースシアターの最難関ダンジョン。99F。レベル5からスタートでアイテム持ち込みなし。ただしパーティは3匹で挑戦できます。

 「聖なる跡地」とどちらが難しいのかは微妙なところです。レベル5スタートで強いポケモンを3匹揃えられればこちらのほうが簡単かもしれません。僕はヒードランキングドラボーマンダで挑んだのですが、キングドラボーマンダがあまり強くなくて苦しかったです。素直にチラチーノとかでよかったですね。

 回復アイテムがかなり少ないです。序盤はピーピーエイダーも不足気味。PPを節約していきたいところなのですが、死んだら元も子もありません。枝は多いのでガンガン振っていきましょう。僕は「きゅうしゅう」のラピスが早いうちに手に入って助けられました。

 一番辛かったのは20F~30Fぐらいです。高耐久かつムーンフォースで一発KOしてくるサーナイトが厄介でした。状態異常にならなくなるミストフィールドを使ってくるので、複数の的に囲まれると「ふらふらだま」等で切り抜けられなくなります。パーティをドラゴンで固めるときついですよ。

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 40F後半ぐらいから安定してきました。ときどきキラキラ床が大量に出てくるフロアがあります(たぶん10の倍数階)。ドーピングアイテム、お金、オレンの実、復活の種が大量に手に入るので、くまなく探し回りましょう。あとは、金塊も多いです。金塊だけは持ち帰れるようなので頑張って集めるのもアリです。

 回復アイテムに余裕が出てきて、強力なラピスが揃えばあとは楽勝モードです。フロアが狭いのでどんどん階段が見つかります。逆に、敵がわんさか寄ってくるのでピンチが長続きすることもあります。

 ラピスの引きがあまり良くなくて苦労しましたが、一発でクリアしました。「なかまふっかつ」とか「かいだんはあく」が序盤に手に入っていたら楽だったろうなぁと思いました。

 

画像はひこちゃんず!さんから頂きました。

 

 

 

その他、ゲームの話。

早く東京で消耗したい

 4月が待ち遠しいです。大学院を修了し、東京で働きます。早く働きたくてたまらないのです。

オレたち若者の街

 地方在住の僕。東京を訪れた回数は50回ぐらいでしょうか。父の単身赴任先を寝床にして観光したこともあれば、たった30分の面接のために新幹線で上京したこともあります。

 東京に行くたびに、僕は東京の持つ熱気に当てられます。地元もそこそこの都市ではあるのですが、東京は桁が違います。地元で一番の繁華街を有するターミナル駅を凌ぐ街が、そこかしこに乱立しています。どこへ行っても人が多くて、特に若い人がやたらと目立ちます。

 国家機関の集積地であり、かつ、経済活動の中心地である東京には、優秀な人がたくさんいることは疑いの余地がありません。少子高齢化が叫ばれる中、東京の人口は増え続けています[1]。人口増加が際立って多いのが4月5月です。我こそはという若者が毎年群れをなして流れ込んでいることでしょう。

 お正月に祖母の家に行きました。祖母の住む街は山に囲まれた自然豊かな田舎です。若い人はみんな外へ出ていってしまうと祖母は嘆いていました。でも、東京だけは若者が集まってくる街。僕らのための街なのです。

高校に入学したてのあの頃

 東京に住んだことがないからそんな好き勝手なことが言えるのだと思うかもしれません。実際、東京へ出て行くことを報告したときに、研究室の先生に言われました。あそこは人の住むところじゃないと。身動きできないほどの満員電車に1時間以上揺られ、会社に着いた頃にはすでにクタクタ。そんな生活を本当にしたいのかと笑われました。(出社時間を工夫すればいいんじゃないかと思いましたが反論する気も失せました。)

 東京で過ごす時間が長くなるにつれ、東京が嫌になるのかもしれません。でも少なくとも今の僕は、東京に憧れています。日本で一番の奴らが集まる、日本で一番の都市。僕のように青臭い理想論を胸に抱えて上京してくる人がたくさんいるに違いないです。そんな同志たちと、出会いたい。話してみたい。

 僕の通っていた高校は、近隣の町から学生が集まってくる進学校でした。入学したてのころ、誰もが初対面で、でも友達になりたくてそわそわしているあの感じを今でも思い出します。自分と同じ匂いのするクラスメイトがたくさんいました。きっと仲良くなれるから話しかけたい。けど、向こうはそう思っていなかったらどうしよう。ドキドキ、ワクワク。地元を離れることで痛感する寂しさや辛さもあることでしょう。でも、同じ価値観を持った同年代の人間が一か所に集まってくるというのは、高校のときと同様に、きっと楽しいだろうと思えます。

 いざ働き始めたら、こんなことを考えている暇もないぐらいに、自分のことで精一杯になるのかもしれません。でも、ふっと横を向いてみると、同じ境遇で戦っている同年代がたくさんいるというのは、自分を奮い立たせてくれる気がします。本当に死にそうになったら地元に逃げ帰ります。

東京の状況はどうだい

 僕は普段、「こんなような人が読んでくれたらいいな」とターゲットを思い浮かべながらここに文章を書くことが多いです。でも、今日僕が書いているこの文章は、特に読み手を想像していません。強いて言うなら未来の自分ですかね。10年後、20年後の自分よ、東京はどうだい。

 BUMP OF CHICKENロストマンが頭に浮かびます(語感も似てますし)。

状況はどうだい 僕は僕に尋ねる

旅の始まりを 今も思い出せるかい

 あと3か月で、その旅は始まります。自分の給料だけで生きていきます。今まで身に着けてきた、あらゆるスキルを駆使して生き抜いていきます。あと3か月。できる限りの準備をしておきたいと思います。

 今日この日の決意を、忘れないようにします。今年のお正月はぐうたらしました。テレビを見ながらモンハンばかりやっていました。だらだらし続けるのは、やっぱり性に合わないなと思いました。どちらかといえば「意識高い系」の人とは友達になれないなと思っている僕ですが、意識が低いよりは高いほうが好きです。あと3ヶ月。ちょっとずつエンジンを温めていきたいです。

 2016年。今年が、始まりの年です。新年を迎えるにあたって、思うことはひとつ。早く東京で消耗したい。

 

 

参考 

[1]東京都の統計

http://www.toukei.metro.tokyo.jp/index.htm

 

 

僕が東京に出ることになった理由。

 

僕の決断が反対された話。

 

 

ロストマン/sailing day

ロストマン/sailing day

 

 

2015年 理系院生の僕が読んだ新書大賞

 今年読んだ新書の中から面白かったものをまとめておきたいと思います。小説もたくさん読みましたが、それよりも読破した新書のエッセンスをここで振り返ることで、今年もいろいろ勉強したなあという気分に浸ろうと思いました。

 注意として、2015年に発売されたものではありません。たまたま僕が今年読んだものをピックアップして発表します。また、理系院生向けのチョイスをしたわけではありません。僕が個人的に面白かった本を選んでいます。

第5位 地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減

 東京に人口が集中して地方都市が消滅してしまうことへの警鐘を鳴らす一冊です。地方から人がどんどん流出していっている現状は分かっているつもりでいましたが、データを見せられると改めて恐ろしく感じます。

 この本が面白かったのは、ただ単に「東京に人口が集中する」という話題だけにとどまらない点です。

本来、田舎で子育てすべき人たちを吸い寄せて地方を消滅させるだけでなく、集まった人たちに子供を産ませず、結果的に国全体の人口をひたすら減少させていく。私はそれを「人口のブラックホール現象」と名付けました。

 東京の出生率は低いです。ですが、地方から若者を吸い上げているので見かけ上は人口が増えているように見えます。それはまさに人口のブラックホール。僕は来年から東京で働くので、この話題が身近に感じられました。たぶん、地元に戻ってくることはないでしょうし、東京で結婚して子どもを育てたいなと思っています。だけど、それは予想以上に難しいことなのだなと、現実を知りました。

 東京一極集中を防ぐために、「地方都市の構造を工夫していこうじゃないか」との提言がなされています。田舎から東京へ流出してしまう若者を、地方都市でなんとか食い止めることができれば良いのではないかという提案です。この案はとても現実的であり、その方向性で正しいのではないかと僕は思います。すべての限界集落がいつまでも存続できるなんてことはありません。限界集落を維持していくためにお金を使うのではなく、地方都市をきちんと発展させることが大事なのだと思いました。

第4位 右翼と左翼

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

 

 右翼と左翼とは何か、いつどこで生まれ、これからどうなっていくのかを解説する一冊。政治に疎い僕でも最後まで楽しんで読み切ることができました。

 読む前は右翼と左翼の違いが本当にわかりませんでした。高校までの授業で教えてもらったこともなかったのです。その違いを理解する必要があるのかどうかもわからなかったのですが、実はこれがわかると政治を見る目が全く変わるのだなと驚きました。

 「右」と「左」の概念はフランス革命のときに生まれました。その誕生から歴史を追っていくことで、右翼と左翼の対立点が見えてきます。現代に至るまでこの概念は生き残っていますが、評価軸が増えたため昔ほどすっきりとは整理できなくなってきました。しかし歴史に照らしてみれば、その存在意義もわかってきます。

 「右」「左」というのは複雑な政治の世界を図るものさしになります。あの人は右寄りだ、あの政党は左寄りだ、ということが分かるようになると、すっきりと政治を見通せるようになるのです。それはすごく気持ちのいい体験でした。政治家の違いがわからないという人も、これを読んでみると評価軸が見えてくると思います。特に僕は大学受験で歴史を使っていないので、非常にためになりました。

第3位 シャネル 最強ブランドの秘密

シャネル 最強ブランドの秘密 (朝日新書)

シャネル 最強ブランドの秘密 (朝日新書)

 

 高級ブランド「シャネル」の創業者ココ・シャネルの生涯を追うことで、シャネルの強さの秘密に迫る一冊です。シャネルは単なる高級ブランドの1つだと思っていましたが、実はそうではなく、ファッションの歴史を変えたブランドであるということがわかりました。シャネル自身が言ったとされる名言も数多く紹介されています。

 シャネルはイミテーションジュエリーを使ったアクセサリーを世界に先駆けて発売しました。20世紀の真っ只中、貴族のお金持ちだけが楽しむことのできた「おしゃれを楽しむ幸せ」を、誰もが手に入れられるように解放したのです。ココ・シャネルがいなければファッションの歴史は遅れ、僕らが今着ているものも違ったものとなっていたことでしょう。

 シャネルは製品をコピーされることを容認した初めてのデザイナーでもあります。シャネルにとって真似されることは自分の服が世間に認められたという事実を示すもの。守るものなどなかったのです。

 ココ・シャネルは生涯結婚せずに働き続けました。そして女性たちに動きやすくて働きやすい服を提供し続けました。時代に先駆けて新しいビジネスを展開した彼女は、彼女自身が新しい時代の女性像を世に知らしめる広告塔になったのです。まさに時代を変えた人です。

 シャネルの人生を追う旅は、彼女のポジティブなパワーに触れ続けるワクワクに満ちたものでした。そしてビジネスの本質を掴むイノベーティブな戦略はお見事というしかありません。古い時代に風穴を開ける新しいビジネスと、次の世紀にふさわしい生き方を両立してみせたココ・シャネル。ものすごくかっこ良いです。

第2位 宇宙は何でできているのか

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

 

 宇宙の根源に迫る研究について、これまで明らかにされている部分、まだ分かっていない部分を丁寧に解説した一冊です。詳細に説明しようとすると複雑になりすぎるので適度に簡略化してありますが、そのバランス感覚がお見事でした。広大な宇宙の秘密を解明するためには、微小な素粒子の研究を進展させる必要があります。最も大きい世界と、最も小さい世界が隣接している。その不思議さに引き込まれます。

 ニュートンが重力を発見して以降の研究の流れをきちんと汲みながら、最新のノーベル賞を受賞した研究までを解説します。宇宙の研究では、時折とんでもない理論をぶちあげて、「こうすれば辻褄が合う」と主張する研究者が現れます。初めは誰からも相手にされないのですが、実験を重ねていく内にその理論の正しさが証明されてしまう。こんなことが何回かあったそうです。僕の専門である工学の分野とは180度違う研究スタイル。面白いですね。

 大学で受けた量子力学の授業は、いまいちイメージできなくて苦手でした。でも、宇宙は何でできているのかという誰もが気になる問題の鍵を握っていたわけです。レベルは全然違うとは思いますが、授業を受ける前に読んでおきたかった一冊です。

第1位 働かないアリに意義がある

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

 

 働き蟻の7割はサボっていて働いていない。そんな衝撃的な事実の他にも、社会性を持つアリならではの面白い生態を紹介する一冊です。アリの研究なんてどこに意味があるのかと問いたくなりますが、実は人間の社会を理解することや、最終的にはダーウィンの進化論にもつながってきます。

 もし巣の中の働き蟻が常に100%の力で働いていたら、不測の事態が起きたときに対処ができません。非常事態にも巣が全滅しないようにしなければなりません。そんな悩みに対する答えが、刺激に対する反応の速さをバラけさせたことによる、サボるアリの出現だったのです。 それは非常にシンプルで、かつ、合理的なシステムです。 まさに大自然の神秘。面白いです。

 その他、アリだけでなくハチの社会性についても面白い研究成果が紹介されています。そして最後に、アリやハチはなぜ社会などという面倒くさい共同体を作って暮らしているのか、ということに話が及びます。ひとつの考え方として、弱い個体が末永く生き残っていくためにはこれしかなかったという考え方が挙げられます。それは人間も同じ。そしてもし完全に自然に適合したシステムを作り上げることができれば、進化は必要なくなります。さて、アリの世界、人間の世界はこれからどうなっていくでしょうか。好奇心を、これでもかとくすぐられる一冊でした。

 

 

アリの話を読んで、酒癖の悪いサークルの後輩を許せる気持ちになりました。 

 

小説ではこれが心に残っています。