理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

Sleep no more体験記 - VRなんて必要なかった? -

 2016年、New York Times紙にて「ニューヨークで最も価値のある100ドルの使い方」に選ばれた話題のスポット。それが”Sleep no more”です。平日に訪れたのですが観光客でとても賑わっていました。

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何の変哲もない建物で開催されるのですが人だかりができているのですぐにわかると思います

 

 Sleep no moreは建物を丸ごと使った新感覚の演劇です。建物の中を観客は自由に動き回ることができ、どこかのフロアのどこかの部屋で行われている演技を好きな場所から眺めることができます。複数の登場人物が繰り広げる群像劇のスタイルで、同時多発的に様々な場所で役者が演技をするので、観客によって目にするものが異なります。

 観客だけでなく、役者も部屋から部屋、フロアからフロアを縦横無尽に闊歩します。3人の人物が1つの部屋で演技をした後、2人が別々の扉から外へ出ていき、もう1人は部屋に残るなんてこともざらに起こります。そのとき、観客はどの登場人物を追いかけるか選択する必要があります。体は1つしかないのです。「どんな劇が見られるか」は多少の運と、観客の選択によって決まるのです。

 また、劇にはセリフがありません。身振り手振りでお話が進んでいきます。現代ダンスのような芸術的な表現も多く取り入れられています。

 

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 ここまでくると、劇のあらすじが全くわからないのでは?という疑問が生じますが、大筋はシェイクスピアの「マクベス」という戯曲をベースにしているのが肝。欧米の人なら大抵一度は読んだことがあるらしく(学校で習う?)、普遍的な物語だからこそこの無茶苦茶な形式が成り立っているのだそうです。

 日本人にとっては、マクベスは馴染みの薄い物語です。見に行く前に、予習をしていった方が楽しめると思います。時間がないのなら、Wikipediaのあらすじを読むだけでも全然違います。

 

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 Sleep no moreは客席から演技を眺める従来の演劇(映画などもそうですが)とは全く違った体験です。自分の足を使って物語の世界を歩き回る感覚、役者と空間を共有する感覚はまさに新体験。

 役者がふいに動いて観客にぶつかってしまうこともありますし、観客を1人だけ小部屋に引っ張り込んで演技するなんてこともあるそうです。このフォーマットならではの見せ方を徹底的に研究しているのだなと思いました。

 演劇というのはアナログで、古臭いエンターテインメントだなと思っていました。しかし、工夫をすればこんなにも刺激的な体験を作り出せるのだなと感激しました。VRなんて使わなくても、観客が物語の世界に没入できるのです。

 マクベスの物語を細かく把握していなかったため、物語自体は消化不良に終わりました。しかし、全く体験したことのないエンターテインメントを味わえて大満足です。2回、3回とリピートすることで、もっともっと楽しめるのではないかなと思いました。またニューヨークに行く機会があれば行きたいスポットです。 

 

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観客は全員白い仮面をつけることで役者と区別され、トランプでグループに分かれて入場します

 

 Sleep no moreとは真逆の、デジタルな新体験を味わえたのがスプラトゥーンの音楽ライブですね。 

 

 

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