読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

2015年 理系院生の僕が読んだ新書大賞

読書

 今年読んだ新書の中から面白かったものをまとめておきたいと思います。小説もたくさん読みましたが、それよりも読破した新書のエッセンスをここで振り返ることで、今年もいろいろ勉強したなあという気分に浸ろうと思いました。

 注意として、2015年に発売されたものではありません。たまたま僕が今年読んだものをピックアップして発表します。また、理系院生向けのチョイスをしたわけではありません。僕が個人的に面白かった本を選んでいます。

第5位 地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減

 東京に人口が集中して地方都市が消滅してしまうことへの警鐘を鳴らす一冊です。地方から人がどんどん流出していっている現状は分かっているつもりでいましたが、データを見せられると改めて恐ろしく感じます。

 この本が面白かったのは、ただ単に「東京に人口が集中する」という話題だけにとどまらない点です。

本来、田舎で子育てすべき人たちを吸い寄せて地方を消滅させるだけでなく、集まった人たちに子供を産ませず、結果的に国全体の人口をひたすら減少させていく。私はそれを「人口のブラックホール現象」と名付けました。

 東京の出生率は低いです。ですが、地方から若者を吸い上げているので見かけ上は人口が増えているように見えます。それはまさに人口のブラックホール。僕は来年から東京で働くので、この話題が身近に感じられました。たぶん、地元に戻ってくることはないでしょうし、東京で結婚して子どもを育てたいなと思っています。だけど、それは予想以上に難しいことなのだなと、現実を知りました。

 東京一極集中を防ぐために、「地方都市の構造を工夫していこうじゃないか」との提言がなされています。田舎から東京へ流出してしまう若者を、地方都市でなんとか食い止めることができれば良いのではないかという提案です。この案はとても現実的であり、その方向性で正しいのではないかと僕は思います。すべての限界集落がいつまでも存続できるなんてことはありません。限界集落を維持していくためにお金を使うのではなく、地方都市をきちんと発展させることが大事なのだと思いました。

第4位 右翼と左翼

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

 

 右翼と左翼とは何か、いつどこで生まれ、これからどうなっていくのかを解説する一冊。政治に疎い僕でも最後まで楽しんで読み切ることができました。

 読む前は右翼と左翼の違いが本当にわかりませんでした。高校までの授業で教えてもらったこともなかったのです。その違いを理解する必要があるのかどうかもわからなかったのですが、実はこれがわかると政治を見る目が全く変わるのだなと驚きました。

 「右」と「左」の概念はフランス革命のときに生まれました。その誕生から歴史を追っていくことで、右翼と左翼の対立点が見えてきます。現代に至るまでこの概念は生き残っていますが、評価軸が増えたため昔ほどすっきりとは整理できなくなってきました。しかし歴史に照らしてみれば、その存在意義もわかってきます。

 「右」「左」というのは複雑な政治の世界を図るものさしになります。あの人は右寄りだ、あの政党は左寄りだ、ということが分かるようになると、すっきりと政治を見通せるようになるのです。それはすごく気持ちのいい体験でした。政治家の違いがわからないという人も、これを読んでみると評価軸が見えてくると思います。特に僕は大学受験で歴史を使っていないので、非常にためになりました。

第3位 シャネル 最強ブランドの秘密

シャネル 最強ブランドの秘密 (朝日新書)

シャネル 最強ブランドの秘密 (朝日新書)

 

 高級ブランド「シャネル」の創業者ココ・シャネルの生涯を追うことで、シャネルの強さの秘密に迫る一冊です。シャネルは単なる高級ブランドの1つだと思っていましたが、実はそうではなく、ファッションの歴史を変えたブランドであるということがわかりました。シャネル自身が言ったとされる名言も数多く紹介されています。

 シャネルはイミテーションジュエリーを使ったアクセサリーを世界に先駆けて発売しました。20世紀の真っ只中、貴族のお金持ちだけが楽しむことのできた「おしゃれを楽しむ幸せ」を、誰もが手に入れられるように解放したのです。ココ・シャネルがいなければファッションの歴史は遅れ、僕らが今着ているものも違ったものとなっていたことでしょう。

 シャネルは製品をコピーされることを容認した初めてのデザイナーでもあります。シャネルにとって真似されることは自分の服が世間に認められたという事実を示すもの。守るものなどなかったのです。

 ココ・シャネルは生涯結婚せずに働き続けました。そして女性たちに動きやすくて働きやすい服を提供し続けました。時代に先駆けて新しいビジネスを展開した彼女は、彼女自身が新しい時代の女性像を世に知らしめる広告塔になったのです。まさに時代を変えた人です。

 シャネルの人生を追う旅は、彼女のポジティブなパワーに触れ続けるワクワクに満ちたものでした。そしてビジネスの本質を掴むイノベーティブな戦略はお見事というしかありません。古い時代に風穴を開ける新しいビジネスと、次の世紀にふさわしい生き方を両立してみせたココ・シャネル。ものすごくかっこ良いです。

第2位 宇宙は何でできているのか

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

 

 宇宙の根源に迫る研究について、これまで明らかにされている部分、まだ分かっていない部分を丁寧に解説した一冊です。詳細に説明しようとすると複雑になりすぎるので適度に簡略化してありますが、そのバランス感覚がお見事でした。広大な宇宙の秘密を解明するためには、微小な素粒子の研究を進展させる必要があります。最も大きい世界と、最も小さい世界が隣接している。その不思議さに引き込まれます。

 ニュートンが重力を発見して以降の研究の流れをきちんと汲みながら、最新のノーベル賞を受賞した研究までを解説します。宇宙の研究では、時折とんでもない理論をぶちあげて、「こうすれば辻褄が合う」と主張する研究者が現れます。初めは誰からも相手にされないのですが、実験を重ねていく内にその理論の正しさが証明されてしまう。こんなことが何回かあったそうです。僕の専門である工学の分野とは180度違う研究スタイル。面白いですね。

 大学で受けた量子力学の授業は、いまいちイメージできなくて苦手でした。でも、宇宙は何でできているのかという誰もが気になる問題の鍵を握っていたわけです。レベルは全然違うとは思いますが、授業を受ける前に読んでおきたかった一冊です。

第1位 働かないアリに意義がある

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

 

 働き蟻の7割はサボっていて働いていない。そんな衝撃的な事実の他にも、社会性を持つアリならではの面白い生態を紹介する一冊です。アリの研究なんてどこに意味があるのかと問いたくなりますが、実は人間の社会を理解することや、最終的にはダーウィンの進化論にもつながってきます。

 もし巣の中の働き蟻が常に100%の力で働いていたら、不測の事態が起きたときに対処ができません。非常事態にも巣が全滅しないようにしなければなりません。そんな悩みに対する答えが、刺激に対する反応の速さをバラけさせたことによる、サボるアリの出現だったのです。 それは非常にシンプルで、かつ、合理的なシステムです。 まさに大自然の神秘。面白いです。

 その他、アリだけでなくハチの社会性についても面白い研究成果が紹介されています。そして最後に、アリやハチはなぜ社会などという面倒くさい共同体を作って暮らしているのか、ということに話が及びます。ひとつの考え方として、弱い個体が末永く生き残っていくためにはこれしかなかったという考え方が挙げられます。それは人間も同じ。そしてもし完全に自然に適合したシステムを作り上げることができれば、進化は必要なくなります。さて、アリの世界、人間の世界はこれからどうなっていくでしょうか。好奇心を、これでもかとくすぐられる一冊でした。

 

 

アリの話を読んで、酒癖の悪いサークルの後輩を許せる気持ちになりました。 

 

小説ではこれが心に残っています。