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【支配から自由へ】映画評:ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

  ハン・ソロスターウォーズ・ストーリーズを観てきました。本国アメリカでは興行成績が振るわず、評判は芳しくありません。

 僕個人としても、同じスピンアウト作品である「ローグワン」比べると見劣りしてしまう作品だなというのが正直な印象です。スターウォーズ作品の1つであるということと、ローグワンがすごく気に入ったことが相まって、期待をしすぎたかなと思いました。迫力のアクションシーンと最後まで気が抜けない展開は、映画としては一級品だと感じました。キーラさんがとても美しかったです。

 以降ではネタバレをしながら思ったことを書いていきます。

 

 

 

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

支配から自由になること

 今作にテーマを1つ設けるなら、「支配から脱出して自由になること」なのかなと思いました。終盤でキーラが言う「人はみな誰かに従っている・支配されている」というような趣旨の発言が一番印象に残っています。ソロがチューバッカに自由になりたいかと尋ねるシーンも印象的でした。

 作中において、主人公のハン・ソロの行動の動機は、劣悪な環境の惑星コレリアから脱出することでした。脱出の途中で恋人のキーラと離れ離れになってしまったせいで、彼女を助け出すことに変わり、さらにキーラと偶然再会したのちは、キーラを自由にすることに変わります。自由になりたい、自由にしたいと願う若者の物語でした。

 この作品の時間軸は、エピソード3と4の間。ジェダイがほぼ全滅し、帝国の力が強まっている時代です。いたるところに搾取と抑圧がはびこり、支配を受ける者がたくさん描かれています。

 故郷にいるときのソロはレディ・プロクシマに支配されていました。彼は帝国軍に入ると軍律に支配されるようになり、奴隷として支配を受けているチューバッカに出会います。ケッセルで鉱石採掘をしている作業員たちはソロたちの活躍で自由の身になり、L3-37はドロイドの自由と権利を主張します。盗賊団エンフィス・ネストは帝国の抑圧に反乱を企てていました。支配と自由が繰り返し描かれていきました。

 支配を受けていることに対して諦めて折り合いをつけているキーラと、そこから助け出したいと思っているソロのすれ違いは見ていて悲しいものがありました。エピソード4,5,6では自由で気ままな宇宙の荒くれものとして活躍したハン・ソロにこんな過去があったとは皮肉なものです。逆に、この経験があったからこそ、彼は何にも属さず一匹狼として賞金稼ぎをしていたのかもしれません。彼の原点を知れる物語でした。

ソロは勝ったのか、負けたのか

 キーラを助け出したい、一緒になりたいと願って一生懸命になっている若き日のハン・ソロ。最終的に彼の願いは届かず、彼は負けたことになります。

 しかしこの作品では、その敗北に対して打ちひしがれたり、涙を流すソロが描かれることはありませんでした。ましてや、ラストはミレニアムファルコンを手に入れて、意気揚々ジャバザハットのもとに向かうシーンで幕を閉じます。いかにもハッピーエンドのような終わり方。それで良いんだっけ?という違和感が残りました。

 もちろん、原作を見てきたファンは知っています。ソロはレイアという新しい恋人を手に入れ、そこにキーラの姿も影も一切ありません。この作品では、ソロはミレニアムファルコンとチューバッカという相棒を手に入れるということ以外に、エピソード4に繋がる事実はないので、最後のシーンはアレで完璧です。でもでも、1つの映画作品としてそれで良いのかという疑問が残りました。

 キーラはソロを裏切ったものの、彼のことを想って何度も助けてくれています。そんな彼女がなぜ最後に船をひとりで発進させてしまったのか、それをソロは深く考えるべきではなかったのか、と。

映画として分かりやすい構造ではない

 上で書いたようにソロの行動原理はキーラを助けたいということだったので、この作品での敵キャラはキーラが使えているドライデン・ヴォスということになります。だけどドライデンはソロに仕事を与えた雇い主であるため、明確に主人公と対立する悪役キャラにはなりません。しかもドライデン自身も大きな組織の一員であることが再三語られるため、何が真の敵なのか直観的につかみにくい構造になっています。

 ローグワンも含め、スターウォーズシリーズでは帝国が倒すべき悪としてわかりやすく描かれるため、正義と悪の関係性を掴みやすいです。この作品はその点が異質で、今までと違う印象を受けました。

 敵がはっきりしないため、起承転結も明快ではありません。アクションで一番すごいなと思ったのは氷の惑星の列車の上での戦いだったのですが、ストーリーラインで言えばあのシーンはそれほど重要な場面ではありませんでした。どこが一番の盛り上がりポイントなのかが掴みにくい作品でした。

 いろいろ理由はあると思いますが、本国の興行成績が振るわない理由の1つに、そもそも映画として分かりやすく面白いものになっているかどうかという観点があるのかなと思いました。1本の映画としては、僕はちょっとイマイチだったかなと。

スターウォーズシリーズの一作品として

 この作品で描かれているのは、ハン・ソロがいかにしてハン・ソロになったのか、というところであって、本筋に直接的に影響を与えるものではありませんでした。一方ローグワンでは、デススターの設計図を入手するという非常に重要な作戦が描かれていたため、失敗してはならないという緊張感をびしびし感じました。ハン・ソロはそういう緊張感に欠けた物語だったなと思います。彼のキャラクターに合っているとは言えるのですが。

 ただ、キーラとダースモールの関係をなぜ最後にあえてほのめかしたのか、というところは今後に期待したいところです。意味のないシーンにわざわざ時間をつかうなんてことはしないはず。どこかでこの伏線が回収されることを祈ります。

 ネットで見つけた仮説ですが、キーラはフォースの素質をダースモールに見いだされ、最終的にエピソード7,8,9のレイの母親になるという説は面白いなと思いました。ソロと離れ離れになっていた3年間、フォースの暗黒面の修行を受けていたから真実を告げられなかった、と。

 スピンアウトが本筋に関係してくるとは思えないので、ファンの妄想に過ぎないとは思いますが、頭の片隅においておこうかなと思います。

 

 

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再三語りましたがローグワンの感想はこちらです。 

 

 ついでにエピソード7と8も。

 

 

 

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー オリジナル・サウンドトラック

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー オリジナル・サウンドトラック