理系院卒のネットワークなブログ

意外なところに「つながり」ってありますよね

スターウォーズは誰かと話したくなる映画/エピソード7感想

 スターウォーズ/フォースの覚醒を見てきました。色々書きたいことがあるのですが、まずはネタバレなしでちょっと書いて、そのあとでネタバレ込みで感想を書こうと思います。

誰かに話したくなる映画(ここはネタバレなしです)

 こうやってスターウォーズについてリアルタイムに書けること自体を幸せに感じます。シリーズ最初の作品であるエピソード4が公開されてから10年以上経った後に僕は生まれましたが、スターウォーズ好きの両親に教育され、ひとりのファンとしてこの時代に立ち会うことができました。

 スターウォーズは見終わったあとに誰かと話したくなる映画なのです。こんなに語りたくなる映画は他にありません。見ている途中はあの世界に完璧に没入できるのですが、エンドロールが流れて現実が戻ってくると、色々なことが頭に渦巻いてきて、それを早く誰かにぶちまけたくなるのです。

 僕が考える、この理由は2つ。

 1つめは、スターウォーズが膨大な設定資料を元に作られているということです。ちょっとしか出てこない脇役に対しても物語がきちんと作られており、その中には幾つものドラマがあります。数えきれないドラマの中から選りすぐりの場面を切り取って、2時間の映画が作られている。そんなイメージを僕は持っています。

 スクリーンの端々からは、舞台の設定が漏れ出ているのです。それらはいくらでも考察の余地を産み、ファンの心をかきたてます。特に今作は時間軸の切り取り方が絶妙で、前後関係をあれこれと想像できる、否が応でも想像させられる作品になっていました。

 2つめは、切り取った2時間の中にも大小様々な謎を仕込んでいるところでしょう。これはスターウォーズ特有のものだとは言いがたいですが、今では一般的になった「シリーズ」という体系を初めて導入したのがスターウォーズだったので、ある種の哲学と呼べる代物になっているのだと思います。今作の謎はきっと次回作で解決してくれると、僕らは期待をこめて語り合うことができるのです。

 というわけで、スターウォーズを見てきたばかりの僕としてはいろんなことをべらべらと語りたいのです。両親と話すのもエキサイティングではありますが、せっかくブログがあるのでここにも書きます。ただ純粋にスターウォーズについて自分の思っていることを話したいという欲求を満たすためだけに書くので、よろしくお願い致します。

 

 

 

 

これ以降ネタバレしますよ。

 

 

 

物語の時間軸(ここからネタバレですよ)

 まずは物語の大枠から書きます。今回、エピソード6のラストから数十年ほど経ったとある時期がエピソード7として切り取られています。

 「a long time ago in a galaxy far far away」で始まる背景の説明で、早速驚きがあります。ルーク・スカイウォーカーがいなくなった?え?エピソード6はすべてがハッピーエンドだったのに。一体何が不満でルークは雲隠れしてしまったんだ。もう最初っから引き込んでくるわけですよ。

 一体どれほどの時間が経っているのか、最初はよくわかりません。悪の軍団がかなり立派に再建しているところをみると、そこそこの時間が流れたのだと予測されますが、それも根拠の弱い予測です。

 時間を完全に把握するのが(僕は)ハン・ソロが登場したシーンでした。ああ。ソロだ。チューイはほとんど変わっていませんが、ソロは明らかに白髪が増えて年を重ねていた様子でした。つまりソロの寿命が尽きるほどの時間は経っていないけど、白髪が増えるぐらいには時間が流れたのだと僕は把握したわけです。

 もちろん現実にハリソン・フォードが年をとったのだからそうなるのですが、その現実との重ね方が絶妙でした。最も大事な「時間を確認させる」という作業を、エピソード6からの続投であるソロに任せた。この采配がニクイですよね。

 エピソード6から7の間の期間は当然省略されているわけですが、全く平穏な日々が続いていたのではないことが徐々にわかってきます。こういう場合は回想シーンを入れて丁寧に説明したくなるのが語り手の性なのではないのかなと思うのですが、回想シーンはほとんどありません。というか、厳密にはないと言ってもいいのかな。あくまでも僕らが劇場で体験するのは濃密な現在だけです。

 唯一レイがライトセーバーに触れた瞬間に過去がフラッシュバックするのですが、あれも数秒でした。しかしそのシーンは唯一過去と繋がる瞬間だけあって、非常に印象的に作られていました。エピソード7,8,9の主人公にしてジェダイ候補筆頭であるレイがジェダイの象徴たるライトセーバーを初めて触る歴史的瞬間ですからね。その特別な瞬間にだけ、回想が許される。そういうところも考え尽くされてますよね。

レイ&フィン vs カイロ・レン

 さて、レイの話がちょっと出たので新キャラの話をします。

 まずはレイ。名前がまずレイだけ。シンプル。貧乏なので身なりもシンプル。彼女の溢れ出る美しさはそのシンプルさによって引き立てられているのかなと感じました。

 強いですよね。なんでもできる。ひとりでできる。そのくせ、戻らないと分かっている家族を延々と待ち続け、ソロの誘いも断って星に帰ろうとする。そのアンバランスさがまた危うい魅力を放って、もう彼女から目が離せませんでした。とにかく美しい。俳優さんを見つけてくるというところから、スターウォーズはすごいんですよね。

 お決まりの展開として、正義の味方はときに悪への誘惑に揺れます。彼女はどうでしょうか。自分にフォースがあると気づいてから数時間と経たないうちに、敵兵をマインドコントロールしてしまうなんて、もしかしたらシリーズ最強のジェダイになれる素質もあるのでは。家族の支えさえあれば弱点はなさそうですが、エピソード8,9ではどうなっていくでしょうか。

 たぶん、鍵を握るのがフィンの活躍なのでしょうね。シリーズ初、ヘルメットを脱いだストームトルーパー。彼のキャラは本当に見事に表現されています。臆病だけど強がり。嘘つきだけど誠実。レイを守りたいのに逆に守られてしまう。おっちょこちょいだけど憎めなくて、アツい一面も持っている。

 ある意味すごく普通の男子で、現実の僕らにすごく近い感性を持っているのだと思います。他のキャラに思いを巡らしてみますと、ソロはフォースを使えませんが、無鉄砲で怖いもの知らず。数々の修羅場をくぐり抜けてきたギャングなので、ちょっと彼に自分を重ねるのは難しいです。ルークや青年アナキンは人並みのことで悩みますが、結局はフォースを持っているのでヒーロー的な側面を持ちます。その点、フィンはすごく普通の男の子。何もかも普通です。そこがすごく良かったです。

 滅茶苦茶強くてなんでも器用にこなすレイと、取り立てて武器はないけど人情味のあるフィン。いいコンビだと思います。どんなふうにも展開を膨らますことができるでしょう。

 そして最後にカイロ・レン。レイアとソロの息子。最初にマスクを外したときはすごく違和感を感じたのですが、あの違和感こそが彼の存在の象徴なのかもしれません。彼はこのままではきっと真の悪にはなれないでしょう。明らかに器が足りていないと感じます。ベイダー卿のような悪のアイコンになれるでしょうか。たぶんなれません。その悪役として物足りないという雰囲気を絶妙に表現している気がします。

 そこそこフォースは使えるようですが、フォースを自覚したばかりのレイに勝てないとは情けないと思いませんか。こんな悪役ありですか、という感じです。すごく弱そう。そして戦ってみると実際に弱い。

 きっと狙ってこういう人物像を作っていると予想します。お決まりの展開としてはなんらかの地獄を見たカイロ・レンがエピソード8で凶悪化し、エピソード9で倒されて終了なのですが、果たしてそうなるかどうかも怪しいと思います。

 背負っているものが重いのが今までの悪役と違うところかなと思います。母はレジスタンスの将軍にしてフォース使い、父は英雄。何があったかはわかりませんがファーストオーダーという巨大組織を束ねることになり、最強の戦士ダースベイダーと比較されてしまう。本当に悪役ながらかわいそうな男です。彼に悪のカリスマを求めるのは土台無理で、彼には彼なりの悪役像が用意されているに違いありません。

 悪が弱いと盛り上がりません。今のままでは悪役が圧倒的にタレント不足です。ソロの生死は不明ですが、正義側にはルークとレイアが健在で最強の新人レイもいます。一方の悪役側には、カイロ・レンの後ろ盾として実体があるのかどうかもわからないスノークという謎の人物がいるだけです。そいつはフォースが使えるかも定かではありません。とにかく悪が不利なんですよね、どう考えても。もしかしたらレイがダークサイドに落ちて、逆にカイロ・レンが正義に目覚めるなんて展開もあるのかも。ベイダー卿のときとは一味違った展開を期待します。

王道のアクション映画としてのエピソード7

 エピソード7全体の感想ですが、スターウォーズらしい謎を散りばめつつも、王道のアクション映画として見事にまとめ上げていますよね。エピソード4,5,6のクラシック3部作に近い雰囲気を感じます。特に全体の流れはエピソード4と全く同じで、それはもう確信犯なんですよね、きっと。オマージュってまさにこういうことですよね。

 印象的なのはソロが刺されるシーン。ファンにはたぶんわかるんですよ。ああ。やられるって。だってあの下が見えない一本橋の上の対決なんて、刺されて落ちるパターンしかないじゃないですか。でも子どもたちは驚いてくれるでしょう。映画のお約束といっても過言ではない展開でした。

 銃撃戦もあるしライトセーバーの斬り合いもあり、戦闘機同士の空中戦もあれば、モンスターがパニック映画的に襲ってくるシーンもある。アクション映画としてやるべきことを全部やりつつ、最後は正義が勝つ。まさに王道。

 しかしファンにサービスすることも忘れていません。敵の基地に突入したときに敵の司令官を人質にとり、ソロが言います。「ガベージシュートに落とそう」。ニヤッとしますよね。

 そして、きちんとエピソード8に続くような謎を用意して、幕を引く。今作で謎が明らかになるところなんてほとんどなくて、たぶんエピソード9まで明かされない謎もたくさんあるんでしょう。謎の塩梅も絶妙で、モヤモヤが滅茶苦茶残るわけではないけど、考えてみると気になる。そんなポイントがいくつか用意されています。

 こういう超有名どころの映画には、駄作だという批判がつきものなのだと思います。でも、アクション映画としての形をきっちり整え、スターウォーズファンの期待にばっちり沿った形で作り上げつつ、サプライズと旧作へのリスペクトも絶妙に配合している。すごいバランス感覚だなあと関心しっぱなしでした。

 でも、やっぱりこうやって理論をごちゃごちゃ考えるのもいいですが、直感的にしびれますよね。わくわくします。この世界に再び戻ってこれて、本当に幸せだなと感じます。

 

 

 BB-8はどんな風に制御しているのか気になって仕方がない存在でした。キャラクターとしてはR2-D2の方が好きです。

スター・ウォーズ BB-8 & R2-D2 1/12スケール プラモデル

スター・ウォーズ BB-8 & R2-D2 1/12スケール プラモデル

 

 

 

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研究原稿やスライドを添削でぶち壊されたときに考えるべきこと

 もうすぐ研究室の学部4年生の卒研発表会があります。先日、発表内容の先生チェックの場に先輩として僕も立ち会っていました。2年前の僕と同様、研究室に入りたての4年生の発表は拙く、先生から大量のダメ出しをもらっていました。

 けっこう辛いんですよね、ダメ出しを受けるというのは。先生チェックの場でのダメ出しとの付き合い方を間違えると、研究室生活が辛いものになってしまうだろうなと思います。もちろん、先生方は僕らの発表がより良いものになるようにチェックをしてくださっているのは重々承知ですが、学生側も上手く付き合っていくように心掛けないと下らないことでストレスを貯めてしまうことになります。

 2つ書きたいことが見つかったので、前編後編として分けることにしました。前編はこちらです。よかったら目を通してみてください。

研究発表への添削・アドバイスは聞き比べると良い - 大学院生のネットワークなブログ

「流れを変えよう」という破壊の呪文

 先生から添削を受けるときに、「流れを大きく変えよう」という提案を受けることがあります。この指摘を受けると今でも僕は凹みます。端的に言ってしまうと「全然ダメだね」ということだからです。これは学会や論文誌の原稿にも言えることです。

 スライドも原稿も、相手にストーリーを伝えることが大事です。「○○という背景があって、その中で××という課題に取り組み、△△という結果を得られた」のような感じです。これが相手に伝わらないと自分の研究が全く理解してもらえません。

 そのストーリー展開を先生に直されるということは、そのスライド・原稿が根本から良くないということです。このままでは全然ダメだよという指摘だと僕は捉えています。この指摘を受けたら素直に受け止める必要がありますし、まだまだだなと大いに反省する必要があるのです。

 流れが大きく変わってしまうと修正するのが非常に大変です。「パート3を全部削って、パート4に○○に関する記述を加えよう」というアドバイスを頂いたとしても、たぶんパート1もパート2もパート5も直さなければならないことが多いです。だから、作業が大変だということも加わって、流れに関する指摘を受けると二重に凹みます。

研究にも改革が必要なときがある

 しかし凹んでばかりいてもしょうがないことです。なんとかポジティブに捉える必要があります。僕は流れを大きく変更するように言われたら、改革なのだと割り切ることにしています。改革を行うには痛みを伴いますから、自分で自分を改革するというのはなかなか難しいことです。他人に任せるというのは合理的な方法でしょう。

 せっかく作ったものがぶち壊されてしまうとショックです。しかしそういうときは、「スライドや原稿の根本、つまり研究内容自体を見直すチャンスだと考えてもよいのではないか」というのが僕の今回の提案です。

 普段研究をしているときは実験やシミュレーションプログラム作成にばかり目がいってしまって、研究全体を俯瞰する意識が消えてしまうことがあります。全体像をしっかり練り込んで置かないと、アウトプットする段階でストーリーがイマイチになってしまいます。だから、先生から「流れを変えよう」と言われたら、研究の動機にまで立ち返ってみることにしています。

 だからといって研究をもう一度ゼロからやり直す必要はなくて、データの見せ方を変えるだけで大丈夫な場合が多いです。「○○のために××を示した」と書いていたところを「△△のために■■を示した」と言い換えるだけで全体の流れは変わります。自分の検討のフォーカスポイントを変えるということです。

 もしくはデータを少し追加することが必要になるかもしれません。今まで扱ってこなかった評価軸を取り入れて、流れを修正することもあります。さらにそこから次の研究テーマが見えるかもしれません。発表を練り込むことで、研究が進展していくこともあり得るわけです。

 黒船がやってきて国中を滅茶苦茶にしてくれたのがきっかけとなり、改革が実行されるようなものだと僕は捉えています。先生が添削によってもたらしたカオスから、新しい秩序が生まれてくる。そう考えると、添削で流れがぶち壊されてもポジティブに捉えられるのではないでしょうか。

めんどくさいおじいちゃんの話

 この話は下の記事に少しインスパイアを受けています。ふわっとした概念の話が多いのですが、僕が体験したことと結びついているので大いに腑に落ちました。

 

第2回 めんどくさがられるような人になりたい。 - 宮本 茂 × 糸井重里 ひとりではつくれないもの。 - ほぼ日刊イトイ新聞

第3回 ひとりではつくれないものをつくってる。 - 宮本 茂 × 糸井重里 ひとりではつくれないもの。 - ほぼ日刊イトイ新聞

 

 コピーライター糸井重里さんと任天堂宮本茂さんの対談です。この中で糸井さんが、「めんどくさいおじいちゃん」になりたいと言います。

たまにやって来て、会議とかに顔出して、
あれこれ言って、若い人たちから
めんどくさがられるような人になりたい。

 言われた方からすれば面倒くさい示唆を投げかける。それが回り回って、企画をよりよい方向に進める原動力になればいいと仰っています。しかしその問いかけは一歩間違えてしまうと製品をダメにする可能性があるので難しく、先の先を読まなければなりません。でも、あっと驚くような素晴らしい企画を作り出すためには、こういうプロセスが必要なのだと思います。

 研究原稿や発表スライドの添削も同じです。先生は、コアな部分を外すような指摘は絶対にしてきません。僕からしたらスライドが滅茶苦茶になってしまうと感じられるような煩わしいアドバイスを頂いたとしても、コアを外した指摘ではないので、僕が頑張ることによってよりよいものに導かれていきます。

 先生からとんでもない指摘がきたとしても、こんな風に考えてみてはいかがでしょうか。 

 

 

 研究スライドを作るときは研究室に置いてあったこの本を参考にしました。かなり具体的なことが書いてあるのでおすすめです。

学生・研究者のための 使える!PowerPointスライドデザイン 伝わるプレゼン1つの原理と3つの技術

学生・研究者のための 使える!PowerPointスライドデザイン 伝わるプレゼン1つの原理と3つの技術

 

 

 

その他、研究室について書いたことを紹介します。 

修士論文発表会について。

 

色んな研究室があるよ、って話。 

 

理系大学院生の休日について。

 

 

おじいちゃん (海外秀作絵本)

おじいちゃん (海外秀作絵本)

 

 

 

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研究発表への添削・アドバイスは聞き比べると良い

 もうすぐ研究室の学部4年生の卒研発表会があります。先日、先生が彼らの発表をチェックする場が設けられ、そこに僕も立ち会っていました。2年前の僕と同様、研究室に入りたての4年生の発表は拙く、先生から大量のダメ出しをもらっていました。

 けっこう辛いんですよね、ダメ出しを受けるというのは。先生チェックの場でのダメ出しとの付き合い方を間違えると、研究室生活が辛いものになってしまうだろうなと思います。もちろん、先生方は僕らの発表がより良いものになるようにチェックをしてくださっているのは重々承知ですが、学生側も上手く付き合っていくように心掛けないと下らないことでストレスを貯めてしまうことになります。

 2つ書きたいことが見つかったので、前編後編として分けることにしました。後編はこちらです。よかったら目を通してみてください。

研究原稿やスライドを添削でぶち壊されたときに考えるべきこと - 大学院生のネットワークなブログ

分かっているけど辛いものは辛い

 先生は学生のスライドをよりよくしようと、様々な視点からアドバイスをしてくださいます。今まで数十年に渡って研究発表を幾度と無くこなしてきた経験がありますから、先生の指摘は真摯に受け止めなければなりません。

 僕自身がアドバイスする側になって感じるようになったことですが、練習の場ではアドバイスをしないとその時間は無駄です。何かを伝えなければ、練習に付き合ったとしても後輩が得られるものはほぼゼロなのです。練習の時間が有意義なものになるように、後輩のスライドの隅々まで見渡して指摘できるポイントを探します。

 時に容赦なく厳しい指摘になったり、細か過ぎるツッコミになったりしてしまうのですが、それは練習なのだからむしろプラスとして捉えてほしいなと思います。なにもアドバイスが無いほうがよっぽど虚しいではありませんか。

 ですが、あれもダメこれもダメと言われ続けるのは辛いです。ダメ出しを受ける側の気持ちもわかるので言いますが、自分なりに工夫をこらして作ったスライドを修正されるのはどんな場合であっても辛いです。優しい口調だったとしても、「こんな説明じゃ全然わからないよ」と言われたらとても悲しいです。先生がこちらのためを思って指摘してくれているのだと分かっていても、言われたその場ではグサッときます。

 加えて学部4年生は、自分の制作物を添削されるということにあまり慣れていません。僕も当時はけっこう辛かったです。こんなに滅茶苦茶言われるのかと凹みました。

発言のブレとコアなポリシー

 さてここで、「慣れるしかないよ」と後輩に声をかけるのはあまり慰めになりません。僕から1つ助言として、「先生が他の学生にどういうアドバイスをするかを意識して聞いてみるといいのではないか」ということを書こうと思います。

 先生の指摘の中には、「そこまで大事だとは思っていないけどとりあえず目についたから指摘する」というケースもけっこう含まれていると僕は思っています。たとえば、単語の微妙なニュアンスの違いとか、図形の配置の仕方とか。もちろん見栄えをよくするために指摘してくれていることではありますが、先生の気分や好き嫌いにも影響されることだろうと思うのです。

 先生自身がそこまで重要ではないと思っている些細な事柄についてのアドバイスは、対象が変わるとけっこうブレるものです。とりあえず目についたものを指摘しているので、自分の発表と別の学生の発表のときで、指摘した内容同士が矛盾していることがあります。こういう「発言のブレ」を見つけたら、自分に言われたことはそこまで大事なことではなかったのだという理解で大体の場合は問題ありません。「言ってることが全然違うじゃないか!」と怒るのはあんまり意味がないことです。

 一方で、アイツにもコイツにも自分にも同じ指摘をしている場合は要注意です。それは先生が持っているコアな考え方であり、真摯に受け止めて慎重に配慮すべきポイントなのです。

 例えばうちの先生が卒研発表会のスライドで重視するのはイントロの部分です。卒研発表の場合は他の研究室の先生と学生が聴衆になります。異なるバックグラウンドを持っているため、イントロが上手く伝わらなかったら「この研究そもそも意味あるのか?」と疑問を持たれてしまいます。イントロの部分を詳しく説明し、「自分の研究が持つ意義」をきちんと語らねばなりません。

 何が先生のコアなのかを発見するためには、複数の学生に対するアドバイスを聞き比べるのが一番です。自分以外の人の発表内容に興味がなくても、どんなアドバイスを受けているかをチェックしてみましょう。

 特に卒研発表会は研究室に入って最初の発表になる人が多いので、僕の研究室では大体みんなイントロの不備を指摘されます。研究室生活を快適に暮らしていくためには、先生のコアなポリシーを把握することはすごく大事なことです。

 どうしても先生の指摘が受け入れらない時、それが些細な問題だったら無視してしまってもいいかもしれません。コアではない指摘は先生自身もあまり覚えていないこともあるのです。逆に、コアな部分の指摘を無視し続けると、温厚な先生であってもいつかは怒られてしまうかもしれません。そういう見極めが大事だと僕は思います。

 

 

 研究スライドを作るときは研究室に置いてあったこの本を参考にしました。かなり具体的なことが書いてあるのでおすすめです。

学生・研究者のための 使える!PowerPointスライドデザイン 伝わるプレゼン1つの原理と3つの技術

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その他、研究室について書いたことを紹介します。 

修士論文発表会について。

 

色んな研究室があるよ、って話。 

 

理系大学院生の休日について。

 

 

 

 

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理系大学院生と出会い、恋愛に発展させる方法

 こんな記事を読みました。そして、感じました。時代の流れが理系院生に向かってきているのかもしれない、と。

 この記事では、理系院生のモテない現実を紹介したあと、付き合ってみるととてもオトクだよということが書かれています。オススメする理由は3つ挙げられており、①何かに打ち込む性質⇒浮気の心配がない②大学院まで進学⇒実家がそこそこ裕福③恋愛経験に乏しい⇒ちょろい、となっています。

 僕は非常に嬉しいです。個人差もありますが、周りの院生の友人を見渡す限り、この3つは的外れではないと思います。理系の大学院という場は、青く輝くブルーオーシャンであります。

 しかし、この記事には肝心のことが書かれていません。それはズバリ「理系院生とどうやって出会うか」です。これがなければ、良さが伝わったとしても意味がありません。出会ってしまえば院生はちょろいので、いかにして好みの彼に出会うか、というのが一番の関門だと思います。

前提

 また、女子SPA!の記事を書いた東京姉妹さんのツイートを中心に、togetterにもまとめられています。

 多くの方は分かっていらっしゃると思いますが、このまとめの中では「理系院生」と「研究者」をごちゃごちゃにしている人が見受けられます(まとめた人が悪いのかもしれませんが)。大学院生は研究をしますが、「学生」であって「研究者」ではありません。僕はここでは大学院生に絞ってお話をさせていただきます。

 大学院は前期過程(通常2年間)と後期課程(通常3年間)に分かれており、 前期過程を終えると修士号、博士課程を終えると博士号(Ph.D)を得ることができます。学部にも寄りますが理系の大学院生のうち約9割は修士号をとって就職します。そしてそのほとんどがメーカーやインフラの会社にエンジニアとして就職するのであって、研究者にはなりません。国の研究施設や企業の研究所に勤めるのは博士号を取った人がほとんどです。

本当にちょろい理系大学院生

 まず、オススメな理由を少し補強したいと思います。特に③の「ちょろい」を強く主張しておきたいです。

 一部を除き、本当に恋愛経験が少ない人が多いです。男は虚勢を張る生き物なので質問してみるとそこそこ経験があるように答えると思いますが、それは実を伴っていません。見せかけ、はったり、数字の上だけです。

 そして理系院生のメンタルヘルスも重要なファクターです。研究は個人戦です。今まで横並びの教育を受けてきた僕らですが、同期の中でも成果がたくさん出る人とそうでない人にはかなり差ができてしまいます。なかなか普段吐き出せない弱音を抱えている人も多いです。支えを欲しているのです。

 難しい恋愛の駆け引きなど必要ありません。女子にアタックされた経験が少ないので、正攻法で簡単に攻略できると思います。理系は論理立てて考える生き物ですから、女子がわざと逆の行動をとったりすると混乱してしまうかもしれません。

理系院生の出会いが少ない理由

 理系院生と出会うのが難しい理由は大きく分けて3つあります。

1つ目:忙しい

 文系の大学生のような自由はありません。分野によっては朝から晩まで拘束されるところもありますし、ひどいところは土日も縛られたりします。日々の研究にプラスして、研究室内のミーティング、論文執筆、学会発表の準備、授業などなど色々なタスクを同時に抱えながら生きているのが理系の大学院生です。

 研究室内で過ごす時間が長く、外部の女の子と出会うのが難しくなります。また、忙しさゆえバイトやサークルはやめてしまったという人が多いです。王道の恋愛発展パターンが望めません。

2つ目:趣味・生活がインドア派

 いわゆるオタクのイメージを押し付けられるのは悲しいですが、インドアな趣味を持っている人が多いのは事実です。そして一人でも自分の時間を楽しめる人が多いです。支えを欲している人が多いと書きましたが、一人で生きていく強さを持っている人が多いのもまた事実。これは彼女がいない時間が長いため孤独に慣れてしまったと捉えることもできますが、とにかく自分を貫いて閉じこりがちな人が多いです。

3つ目:恋愛に奥手

 恋愛に突入できる距離にあったとしても、奥手な院生はその距離を詰められません。せっかくの機会が恋愛に発展せずに流れてしまうケースは多いでしょう。これでは出会っていないのと同じです。

 

 理系院生と出会うことが難しい理由を3つ挙げましたが、クズ男が言い訳しているようにしか見えないですね。まずは院生の方が努力しろよと。それは仰るとおりでございます。

 でも、なんとかわかってほしいのです。なかなか恋愛に踏み込めないこの現状を。そして、女子の皆様には院生を候補に加えて欲しいと思います。そのために、僕が考える出会いの方法を次に考えていきます。

理系院生と出会う方法

 意外性のない回答になってしまいますが、「合コン」と「友達の紹介」の2つが王道なのではないかと思います。

 まず、どちらの方法にしても強制的な出会いの場になるというのがポイントです。忙しくてもインドアでも奥手でも、土俵に引っ張りあげられては院生も勝負するしかありません。

 合コンは手軽かつ複数人と接触できる方法です。しかし、男子チームが理系院生だけの場合、女子チームは苦労する可能性があります。理系人間は、「男子も女子も巻き込んでみんなワイワイ盛り上がる」ということがけっこうな確率で苦手です。合コン慣れしている女性ほど、物足りなく感じてしまうと思います。女子チームが引っ張っていくという気合いがあれば、案外盛り上がるのかもしれません。

 そういう意味で友達の紹介というのが一番無難なのではないでしょうか。理系院生の中には、僕の目の届く範囲にも「とんでもないヤツ」がいます。しかし紹介の場合は仲介役を挟んでいるので、そういうヤツをフィルタすることができます。仲介役にとってもメンツがかかっているので適当なことはできません。

 ただこちらも、会話の盛り上げ上手な男性ばかりだと思っていると、女性は不満がたまってしまうかもしれません。ハードルは低くしておくが吉です。

 

 いざ合コンするにしても紹介してもらうにしても、ツテがなければ実現しません。大学院生とゼロからコネクションを作るのは大変なので、学部時代に作っておけるのが理想です。大学にもよると思いますが、僕の大学は工学部の95%、農学部の80%は大学院へ進学します。学部生のうちはそこそこ暇なのでバイトやサークル活動に参加している人も多いです。意識して繋がりを作っておくと良いのではないかと思います。学部生のうちに捕まえてしまうのが実は一番賢いのかもしれませんね。

 というわけで、東京姉妹さんが作ってくれたこの流れ、無駄にしたくないと思い色々書いてきました。女子のみなさんは騙されたと思って理系院生を狙ってみてください。ブルーオーシャンに飛び込んでください。合言葉は「理系院生の知り合いでいい人いない?」です。何卒、よろしくお願い致します。

 

 

理系院生の生態についていろいろ書いています。 

僕らは休日もけっこう研究室に行きます。

 

僕は幸運なことにサークルに参加しております。

 

出逢う力

出逢う力

 

 

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【歌唱力体感】西野カナのバラード曲おすすめランキング

 いきなりですが、僕は西野カナさんの音楽が好きです。しかしこれを友人に打ち明けると変な目で見られます。「男子大学院生が西野カナを聴いてなにが悪い!」と憤りを感じます。ですが友人たちの態度の理由が分からないわけではないので、彼らになんとか良さを分かってもらいたいという気持ちでこれを書いています。

 僕が彼女の楽曲を聴くのは声が好きだからです。歌詞やルックスにさして興味があるわけではありません。少し鼻にかかったようなハスキーさと、力強く伸びる高音が聴いていてとても心地よいのです。それだけです。それで十分すぎる理由になります。

 元気でカッコイイ曲もたくさんありますが、とりあえずここではバラードを推します。彼女の楽曲の魅力が端的に伝わるのではないかと思います。寝る直前に部屋を真っ暗にして、ヘッドホンやイヤホンを使って聴いてみてください。一応youtubeの音源を貼っておきますが、実際の音源で聴くことを何よりオススメします。apple musicなどを使って聴いてみてください。

 

6位 君って

2010年11月


西野カナ『君って』

 

 ゆったりしたメロディと平凡に入るサビ。そこから一転して一気に伸び上がる「おもいだしてごらんよ」の高音。そのメリハリがなんとも面白い一曲。なかなか歌うのが難しそうです。

 西野文学の1つ「友達大好き!」ソング です。

 

5位 You are the one

2010年6月

You are the one

You are the one

  • 西野 カナ
  • J-Pop
  • ¥250

 

 冒頭の「いまごろどーしてるのー」で早くも心を打たれます。ほんとにいい声です。「Now and forever」から盛り上がるサビはバラードなのになんだか少しカッコイイ。「うまれかわってーーもーー」の「てー」がすごく良い。声がぐいーんと伸びてきて、遠くから鳴り響いてくるように感じます。

 「とりあえず英語を混ぜておけばウケるJ-pop」をわざと皮肉っているかのような英語のオンパレードがクールです。

  

4位 always

2012年11月


Kana Nishino - Always 西野カナ

 

 わかりやすく歌唱力を感じられる曲です。繰り返される「なーーいもの 」のノビが非常に心地よいです。通はここだけでごはん3杯はいけるとかなんとか。その後もサビが続くのですが、最後まで力強く歌えるのはさすがの一言です。

 歌詞は従来の等身大女の子路線から少し踏み出そうとする様子が見て取れますが、ちょっとぼんやりしています。

 

3位 Wishing

2011年6月


AMV Wishing - Kana nishino

 

 「声の響きを体感できる度」は他の楽曲に劣りますが、個人的にすごく好きなのでランクインさせました。サビに入る瞬間のアレンジが好きです。あの細かく刻むようなエフェクト。彼女のバラードの中では珍しく歌声が裏に隠れがち。それがなんだか新鮮です。

 カラオケで誰かと一緒に歌ってみたい一曲。「しんじてー」を阿吽の呼吸でパート分けして、「ねーがーうーよー」でバッチリ合わせてみたい。

 フラれた相手を引きずって、前に踏み出せない弱い時の等身大西野文学。

 

2位 たとえどんなに

2011年11月

 SONYウォークマンのCMに使われました。30秒だけですがオーケストラバージョンもあります。


西野カナ CM SONY ソニーウォークマン 「よみがえる思い出」篇 曲 たとえどんなに

 

 耳に残る印象的なピアノ伴奏とのマッチングする歌声が美しいです。メロディ部分はびっくりするぐらいおとなしいのですが、逆にサビの強さが映えます。サビの頭からどかんと殴りに来ますが、後へ行くほど伸び続ける長めのサビがたまりません。「きみーをおもーいつづけてー」から畳み掛けるような2ループ目が好きです。

 女子中学生にジャストミートしそうな歌詞。

 

1位 さよなら

2013年10月


西野加奈「再見」完整中文字幕版

 

 初っ端、物悲しさがにじみ出る歌い方になんだかはっとしませんか。こんな歌い方できたんだ、と。メロディはかなりゆったり。サビの「あえーるよー」のノビは健在。バイオリンの響きとマッチする重厚な響きが素敵です。「ふたりがー」の飛び上がる高音がアクセント。

 歌詞の世界観は夢追い人の彼氏にフラれるという少し凝った設定。ニッチな範囲で深い共感を呼びそうです。「思い通りにはいかないかもしれないけど」「好きという気持ちだけじゃダメなんて信じたくないけど」という表現から、ちょっとだけ諦めることを覚えたんだなと成長を感じます。

 

 

 

YUIさんについても以前書きました。よかったらこちらもどうぞ。

モンハンの戦闘BGMなんかもランキング作りました。

 

 

 

さよなら(通常盤)

さよなら(通常盤)

 

 

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修論発表会で理系院生は二度死ぬ

 先日、修士論文の発表会がありました。

地獄一幕目 異種格闘技戦

 修論の発表会では他の研究室の先生が大学院生の発表を審査します。僕の専攻では発表15分、質疑応答10分の時間がそれぞれの学生に割り当てられます。学部4年で研究室に入ってから今まで国際学会で4回、国内学会で5回の口頭発表を経験してきましたが、こうした学内の発表には学会とは違った怖さがあります。

 審査員として参加される他の研究室の先生は、当然様々な分野を研究しています。学会発表と大きく違う点は、聴衆がバッググラウンドを共有していないので基礎から説明をする必要があるということ、及び個々の説明についても専門用語をなるべく排した説明が求められることです。苦労することではありますが、こちらも何度も研究発表を繰り返してきていますから、そこまで難しいことではありません。

 修論発表会は、15分の自分の発表のターンは難なく終わるのです。恐ろしいのはその後の質疑応答の時間です。

「それでは、本発表に関してご質疑、ご討論ある方は挙手をお願いします」

 座長という名のレフェリーが、「ファイト」の掛け声をかけるかのように高らかと試合開始を宣言します。僕ら院生は、たったひとりで居並ぶ強敵たちを相手にしなければなりません。審査員の先生方は、各分野で華々しい成果を上げて大学教授のポストまで登り詰めた怪物たちです。ボクサーや柔道家、相撲取りまでが参戦するこのリングはまさに異種格闘技戦。彼らの猛烈なラッシュを耐え続けなければなりません。

「この分野に詳しくないので的外れかもしれませんが」

 ひとりのファイターが攻撃を開始します。的外れな易しい質問がくるぞと期待をする挑戦者は、油断していると一気に距離を詰められ必殺の質問でグロッキーになります。彼らは畑違いの研究にも関わらず、挑戦者の研究の本質を瞬時に見極め、ここが急所だと言わんばかりの的確な攻撃を繰り出してきます。想定されうる質問に対しては綿密に準備をしておかなければなりません。ヘッドを守るためにきちんとガードを上げておく必要があるのです。

「ちょっとよくわかっていないので教えて欲しいのですが」

 こういう前置きは大抵牽制です。すべては理解していなくとも、突かれて痛いところを見分ける眼力を先生方は持っています。油断大敵です。

「前提がそもそもおかしいと思うのですが」

 先生同士の仲が悪かったり、そもそも業界の相性が良くなくて意地悪な質問をしてくる先生さえいます。大学教授はいい意味でも悪い意味でも変な人がたまにいるのです。火を付けてはいけない人が暴れ出したらもう大変です。正直言ってどうしようもないのですが、その危険人物が食いつくポイントが分かっているなら外すことが大事です。特定の言葉に反応するなら使わないように発表する、などです。

 質疑応答の10分はとても長く感じます。度重なる痛撃に気絶寸前の挑戦者。鳴り響く発表時間終了のベルは、試合終了のゴングかはたまたノックアウトのゴングか。しかし座長が終わりを告げれば、発表者は開放されるのです。ズタボロになった挑戦者は、自分の研究室に引き上げていきます。

地獄二幕目 傷口に塩

 審査員にボコボコにされたとしても、発表が終わってしまえばこれ以上の追撃はありません。安堵を引き連れて帰還した挑戦者。さあ今日は早く帰ろうと帰り支度を始めた瞬間、まさかの地獄の二幕目が開きます。

 修論発表会には当然自分の研究室の先生も出席しています。僕らのふがいないリングでの戦いを見た先生たちは、研究室に帰ってくるとダメ出しに入ります。

「あの答えは厳密に言うと間違っているよね」

 審査員の攻撃をいなすために必死だった僕らは、専門家の目からみたら明らかに間違った回答をしてしまうことだってあります。焦ると冷静な判断力を失ってしまうじゃないですか。「ST○P細胞はあるのか」と審査員に聞かれたので「ST○P細胞はありまあす」と答えたら研究室に帰ってきて「あるわけないだろ」と怒られるような感じです。もう発表会は終わったのだからいいじゃないかと心のなかで叫ぶ僕らを、研究室の先生はいたぶります。おそらく良かれと思ってアドバイスをくださったのだとは思いますが。

「あんなふうに答えたら誤解されてしまうよ」

 先生たちの指摘は続きます。先ほどの戦いで負った傷跡にたっぷりの塩を塗りこむかのように。わかってるんですよ、僕らだって。あんまり上手く答えられなくて、審査員の先生が納得してなかったことぐらい。ぐすん。

 こうして、2回も業火に焼かれて無機物になった院生は、質疑応答の難しさをその身に刻みつけ、研究を終えるための引き継ぎ作業に励むことになります。アーメン。

 

 

その他、理系の大学院生について書いたこと。

いろんな研究室がありますよね、という話。 

 

休日も研究室に通う院生の生態。

 

研究室の先生と就活時の距離の取り方。 

 

 

 

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モンスターボールに学ぶ価格戦略・カルテル・消費者行動

 モンスターボールを例にしてBtoCの商売戦略を学んでいきましょう。

製品性能と価格決定

 モンスターボールとは野生のポケモンを捕獲し、持ち運びできる大きさで管理を可能とする道具です。機能によって様々な種類のボールが製品化されています。

 最も一般的なボールであるモンスターボール(200円)とハイパーボール(1200円)を比べたとき、ポケモンを管理するという観点において差はありません。ゴージャスボール(1000円)は「ポケモンにとって内部が非常に快適なゆえトレーナーになつきやすい」という特徴を持った製品ですから、逆に言えば内部の快適さが同等であるモンスターボールとハイパーボールの差は捕獲性能だけであることがわかります。

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 両者の捕獲性能差は2倍であることがわかっています。しかし価格は6倍と強気の設定です。いったいどのような販売戦略がとられているのでしょうか。

 注目すべきは、ボールが販売される地域です。野生のポケモンのレベルが低い地域ではハイパーボールは売られていません。モンスターボールで十分満足のいく捕獲確率が保証されるからです。一方で野生ポケモンが強い地域ではハイパーボールが販売されています。モンスターボールでは捕獲率が悪いと感じる消費者がハイパーボールを買ってくれる可能性が高いからです。地域によっては扱う商品を絞り、在庫管理や配送のコストをカットしています。

 また、製品のターゲット層にも注目します。ハイパーボールを必要とする消費者はレベルの高い野生ポケモンの捕獲に挑戦する可能性が高いと言えます。一般的に、ポケモンと長く連れ添った熟練のトレーナーほど強いポケモンを求め、そのようなトレーナーは経済力もあると考えられるのでこの戦略は妥当です。単純に倍率だけで価格が決定しないのは、ボール使用の試行回数を増やす間に戦闘状況が変化する可能性があり、少しでも高い捕獲性能を持つボールを投げたいと思うのがトレーナー心理であると製造元が予測したからでしょう。

 ボールの製造方法は企業秘密となっていますが、十中八九ハイパーボールの方が利益率が高いのだと考えられます。一度ハイパーボールを使ってしまったら、元のモンスターボールを使う生活にはなかなか戻れません。他のトレーナーとバトルするときに相手がどんなボールを使っているかは丸わかりですから、見栄を張りたいという気持ちもハイパーボールの使用を加速させます。

 計算すればモンスターボールの方がコストパフォーマンスが高いのは明白です。でも、ハイパーボールをまとめ買いする裕福な情報弱者は後を絶たないのでしょう。まんまと販売戦略に引っかかっているのです。 

価格カルテルと巨大資本

 なぜこのような消費者を騙すような商法が糾弾されずに放置されているかといえば、市場を独占しているからということに尽きます。赤緑のシルフカンパニールビサファのデボンコーポレーションには、自社の商売エリアにおいて競合が存在しません。彼らは互いの縄張りを守る「販路カルテル」と、製品の値段を一定の値段に合わせる「価格カルテル」を併用していると言えます。

 一方でおいしいみずが200円で売られている世界で、モンスターボールを200円で販売して利益が取れるのか、という疑問が浮かびます。モンスターボールの価格は人々の暮らしに大きく影響を与えるでしょう。ハイパーボールはさておき、モンスターボールの価格については電気料金のように法律で取り決めがあるのかもしれません。

 さて、硬直しきったボール業界に風穴を開ける勢力になるのではないかと期待されたのが金銀で登場したボール職人ガンテツです。モンスターボールやハイパーボールにはない尖った性能と個性的なデザインを持ったガンテツ製のボールはブームを巻き起こしました。

 しかしボール業界側もやられっぱなしではありません。特殊な用途のボールに需要があると知るやいなや、巨額の資金を投入して製品開発に乗り出します。こうして作られたクイックボール(1000円)やダークボール(1000円)は非常に高性能であることがトレーナー達に認められ、ハイパーボールに変わる収益の柱になりました。

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 一方のガンテツ製のボールには汎用性がありませんでした。月の石で進化するポケモンだけが捕まえやすくなるムーンボールなどその最たる例です。ブームが去るとガンテツのボールを欲しがるトレーナーはごく限られたマニアだけになってしまいました。

消費者行動の謎

 一方で、消費者の行動を読み切るのは至難の業です。製造元が想定している使用用途を越えた使い方が流行ることがあります。

 一部のトレーナー達の間で、「オシャレボール」という考え方が共有されるようになりました。ポケモンがボールから飛び出てくるときのエフェクトはそれぞれのボールで異なります。ボールの性能は度外視して、「それぞれのポケモンにふさわしいエフェクトを発するボールで捕まえてあげる」というのがオシャレボールの考え方です。

 例えば、波乗り・釣りで出会った野生ポケモンが捕まえやすくなるダイブボール。泡が飛び出る独特のエフェクトから、水ポケモン全般に似合っていると人気です。使用用途を考慮して海辺のショップで展開するために作られたこのボールでしたが、消費者の熱い要望により(?)全国展開されています。

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 トレーナー達の予想外の消費行動も、ボール業界には追い風となっています。対戦時のボールエフェクトをカスタマイズできる商品なんてあったら売れるのではないかと思いますが、なかなか導入されません。技術的に厳しい、大量生産に向かない、採算が取れる見込みがないなど、何かしらの理由があるのでしょう。しかしいずれは商品化されると僕は考えています。今後の展開も目が離せません。それでは、今日はここまでです。みんなもポケモンゲットじゃぞ~。

 

 

ボールの画像はこちらからお借りしました。

ひこちゃんず!

 

 その他、ゲームについて書いたこと。

 

ポケットモンスター ブランケットインクッション モンスターボール PMAP298

ポケットモンスター ブランケットインクッション モンスターボール PMAP298

 

 

 

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